笠 議員の質問と答弁

○47番(笠 康雄)登壇 私はみらい福岡市議団を代表いたしまして、福岡前原道路の料金所について、財政健全化への取り組みについて、アイランドシティの土地売却について、以上3点についてお尋ねします。
 質問に入る前に、市長、きょうは何の日か御存じですか。(発言する者あり)それも合っているでしょうけど、重陽の節句なんですよね。中国では何かこう1から10まで数ある中で10が最高の数字なんだけど、そこは一番最後の数字ということで、その1つ前の9というのが非常にたっとばれているそうです。その9が2つ重なるのがきょうで、「おくんち」という言葉もここから出ているというふうに物の本に書いてありました。それはどうでもいいんですけど、きょうはそういう縁起のいい日だということで、答弁は非常に前向きの答弁をしていただけると助かります。どうぞよろしくお願いします。
 まず、福岡前原道路の料金所についてですが、本市の高速道路の体系は1号線から5号線までの都市高速道路を中心に九州自動車道や西九州自動車道に直結した放射環状型のネットワークを形成しています。本年2月には、福岡都市高速道路の5号線と西九州自動車道のいわゆる福岡前原道路とが接続されました。これにより、例えば、西区今宿から都市高速道路を利用して太宰府方面へ行く場合、今までの1号線の千鳥橋ジャンクション経由より約20分短縮され、大変便利になりました。また、福岡前原道路から都市高速道路への乗り継ぎもETCの利用によりスムーズに走行できます。ところが、その帰り道、すなわち都市高速道路から福岡前原道路へ乗り継ぐ場合はETCが設置されていないため、福岡西料金所で一たん停止し、料金を支払う必要があり、福岡前原道路のたった14.2キロの間に2回も料金所でとめられています。このため、特に土日、祝日は料金所で混雑しており、これでは何のための高速ネットワークかわかりません。
 私は、平成18年の6月議会においても、福岡前原道路でのETC設置問題を取り上げました。あれから5年たちますが、状況は全く進展しておりません。先日、ラジオを聞いておりますと、リスナーからETCをつけてほしいとの質問に対し、県の道路公社からの回答と思われますが、採算上の理由でつけられないとのコメントがされておりました。
 そこでお伺いしますが、ETCの設置について、私は福岡西料金所の下りレーン及び前原料金所の上り下りのレーンの合計3カ所に設置すればいいと思うのですが、設置する場合の費用や運営費はどれほどなのか、お尋ねします。また、福岡都市高速道路ではETCを何カ所設置し、幾ら初期投資がかかったのか、お示しください。
 次に、財政健全化への取り組みについてですが、先月8月24日、アメリカの格付会社が日本国債の格付をダブルエーツーからダブルエースリーに引き下げました。その要因として、格付会社は、国の財政赤字や債務残高の増加に加え、財政再建に向けた政策の一貫性のなさを指摘しています。御承知のとおり、国と地方を合わせた長期債務残高は現在900兆円を超え、国内総生産の約1.8倍、先進国で最悪の水準と言われています。また、今年度の国の一般会計予算では、当初予算の規模92兆円のうち41兆円が税収で44兆円が公債金、つまり借金となっています。既に税収以上に借金をしている状況なのです。だれが見ても国家財政は悪化の一途をたどっていることは明らかであり、この状態は民間であれば民事再生どころではありません。即破綻です。
 このような中、国は税と社会保障の一体改革の中で、今後の社会保障費は毎年度1兆円ずつ伸びていくと予測し、消費税率の引き上げなど増税により社会保障に関する安定財源の確保と財政健全化の同時達成を図ると言われていますが、本当に実行できるのでしょうか。さらに、未曾有の大災害となった東日本大震災の復旧、復興に5年間で19兆円、10年間で23兆円程度が必要だと言われています。しかし、この財源の手当てすら見込めていない状況では、国の財政再建などとても信用できるものではありません。それでは、景気の回復によって税収がふえるのを待つというのはどうでしょうか。これも全く現実的ではありません。世界経済はリーマンショック以降、金融市場、景気動向ともに不安定な状況で、現在、世界同時株安の展開となるなど先行きは極めて不透明です。また、日本経済といえば、23年度の名目GDPがマイナス0.4%のマイナス成長になると政府は試算しており、東日本大震災の影響が色濃く残る中、最近の急激な円高や株安、そして、電力供給能力への懸念を考えると、企業の海外流出が加速され、個人消費の低迷やデフレからの脱却はそうそう容易なものではありません。一昔前ならば、ここで経済対策だ、公共事業だということになったのでしょうが、今の時代、そんなものでは景気は回復しないことは既に証明済みです。逆に、そうした多くの公共事業が今の900兆円という膨大な借金をつくってきたのです。この900兆円は、将来にわたって必ず返さなければいけないお金です。900兆円がどの程度の金額かというと、毎年、税収のすべて約40兆円をこの借金返済に充てたとしても、23年もかかることになるわけです。しかし、税収のすべてを返済に充てることは現実には不可能なわけで、仮に税収の半分を返済に充てるとすると、借金返済までには倍の46年という気が遠くなるような年月がかかります。それほどの借金を背負っているのです。まさに打つ手なしの感があり、政治の劣化と言わざるを得ません。国民も、国は政治主導ではもうやっていけないと、そう思っているのではないでしょうか。我々がこうして議論している間にも借金はふえ続けているのです。毎年約40兆円ずつ借金を重ねているわけであり、この額を1日に換算すると、何と1,100億円にもなります。
 話を戻しまして、ムーディーズは将来の格付アクションにつながるマイナス要因として、こうも言っています。日本国債は、今はその多くが国内で消化されているが、仮に国内投資志向が弱まれば長期金利が上昇し、政府の利払い負担がふえるだろうと。そうなれば、当然国家財政の悪化はさらに加速します。国の財政状況がこれまで以上に悪化すればどうなるのか、地方だって、ただでは済みません。例えば、地方交付税や国庫補助金の削減といった形で地方財政に大きな影響を与えることは容易に想像できます。私は、仮にそうしたことが起こった場合でも深刻な事態に陥らないよう、地方としてやれるべきことは今やっておくこと、今こそ福岡市を徹底的にスリム化し、柔軟な財政構造を確立しておくことが重要だと考えます。つまり、こうした国の財政状況や経済動向を踏まえると、福岡市としても財政健全化に向けて聖域なき改革に大胆かつ早急に取り組んでいく必要があると考えるわけです。健全化を進めるに当たって一番の心配の種がアイランドシティなのですが、それは後ほどお聞きするとしまして、まずは本市の財政健全化に向けた取り組みの状況についてお尋ねしたいと思います。
 今年度は、財政リニューアルプランの最終年度となりますが、このプランに基づく取り組みの具体的な内容をお尋ねします。また、その結果、本市の借金である市債残高はどうなったのか、その推移をお尋ねします。
 次に、アイランドシティの土地売却についてですが、アイランドシティ整備事業についての懸念は、今後、土地の売却をどうやって進めていくつもりなのかという点であります。市は、アイランドシティ整備事業は本市の成長戦略にとって重要な事業だと位置づけております。スピード感を持って具体的な施策を展開していくことが求められており、現在、事業推進上の大きなターニングポイントに来ている重要な時期であると考えます。後ほど幾つか質問において明らかにいたしますが、土地分譲が進んでいない状況において、市はそのことに自覚と責任を持って事業推進に当たらなければならない。そうした緊迫した状況にあるにもかかわらず、学識経験者や産業界など第三者から成るアイランドシティ・未来フォーラムを設置して、年内いっぱい議論すると聞いております。多様な御意見を聞くこと自体を云々するつもりはありませんが、事業を速やかに推進していかなければならないこの時期にフォーラムを設置したのはなぜか、また、このフォーラムを設置したそもそもの目的は何なのか、お尋ねします。
 さて、アイランドシティですが、みなとづくりエリアでは国際海上コンテナ取扱量の増加と大型コンテナ船の入港に対応すべく整備が進んでおります。日本海側では、最大の取扱量を誇る博多港もリーマンショック後は取扱量が伸び悩んだようですが、ことし上半期では速報値で対前年比約2割増と聞いており、東アジアに面する日本海ゲートウェイとして成長が期待されるところです。また、まちづくりエリアでは、住宅、福岡市初の小中連携教育校や高度専門病院、特別養護老人ホームなどまちの形成が徐々に進んでおり、8月末現在で約1,500世帯、約4,500人の市民が生活を営まれていると聞いております。しかしながら、土地分譲は進んでいるのでしょうか。
 まず、アイランドシティの土地分譲の状況についてお尋ねしますが、みなとづくりエリア、まちづくりエリアの計画上の分譲面積、これまでの分譲実績及び進捗率と平成20年度以降の分譲実績について、エリアごとに年度別の分譲面積をお教えいただきたいと思います。また、平成23年度以降の事業費が幾らなのか、そして、平成22年度末での借入残額は福岡市と開発会社でそれぞれ幾らあるのか、お示しください。
 以上で1問目を終わり、2問目からは自席にて行います。
 
○議長(森 英鷹) 井上道路下水道局長。
○道路下水道局長(井上隆治) 福岡前原道路の料金所についてお答えいたします。
 福岡前原道路につきましては、西九州自動車道の一部区間であり、早急な道路整備を図るため、福岡県道路公社が有料道路事業として整備を行い、現在、管理をしているものでございます。福岡前原道路にETCを導入する場合の費用につきましては、福岡県道路公社によりますと、連結する福岡北九州高速道路公社の中央処理システムが使用できると仮定した場合、3カ所への端末装置の設置で約5億円とのことであります。同公社のシステムが使用できず、独自にシステムを開発、設置する必要がある場合は、さらに10数億円が必要になると聞いております。また、運営費といたしましては、年間約3,000万円以上が必要とのことであります。
 次に、福岡都市高速道路におけるETCの設置費用についてでございますが、平成18年度導入時の初期投資費用といたしましては、32カ所で約38億円とのことでございます。以上でございます。
 
○議長(森 英鷹) 野見山財政局長。
○財政局長(野見山 勤) 財政健全化への取り組みについてお答えいたします。
 財政リニューアルプランに基づくこれまでの具体的な取り組みにつきましては、市税収入率の向上や広告料収入を初めとする多様な財源の確保など歳入構造改革を進めるとともに、職員数の削減等による人件費の抑制や事務事業の見直し、効率化など歳出構造改革に努めてまいりました。また、高金利債の繰上償還による利子軽減や未利用地の売却など資産債務の圧縮を図るとともに、局区予算制度など財政運営に係るシステムの手法の改革を進めてまいりました。その結果、当初予算ベースで平成21年度は約88億円、平成22年度は約108億円、平成23年度は約92億円の財源を捻出し、財政の健全化に取り組んできたところでございます。
 次に、市債残高についてのお尋ねでございますが、財政リニューアルプラン策定後の市債残高の推移につきましては、全会計で平成20年度末が2兆5,500億円余、平成21年度末が2兆5,157億円余、平成22年度末が2兆4,933億円余と毎年度着実に減少してきており、ピーク時の平成16年度末の2兆7,092億円余と比べますと、2,158億円余の縮減となっております。以上でございます。
 
○議長(森 英鷹) 貞刈総務企画局長。
○総務企画局長(貞刈厚仁) アイランドシティ・未来フォーラムについてのおただしでございますが、福岡市の都市戦略上、重要な事業であるアイランドシティ整備事業につきましては、平成20年のリーマンショック以降の厳しい経済状況や企業ニーズが変わってくる中で、事業を円滑に計画どおり進めることが厳しくなっております。そのため、アイランドシティにおける事業の意義や効果、事業推進方策に関し、行政のみならず、市民や企業等の皆様を含めて理解や共感を得るとともに、これまでの考え方にとらわれることなく、新たな取り組みについて広く御意見をいただくことを目的として、このたび、アイランドシティ・未来フォーラムを設置したものでございます。フォーラムにおいては、より柔軟な立地促進策等によって投資意欲を喚起する必要があるなどの事業推進上の課題を認識した上で、まちの魅力の向上やまちづくりを先導するためにどのような都市機能やプロジェクトが必要なのか、厳しい経済情勢や土地所有に対する意識が変化している中で、企業等のニーズに対応した立地促進策とはどのようなものなのか、アイランドシティ事業に関する市民、企業等の理解促進策としてどのような方策が有効なのかなどにつきまして、多面的に御検討いただき、提言をいただきたいと考えております。以上でございます。
 
○議長(森 英鷹) 松本港湾局長。
○港湾局長(松本友行) アイランドシティの各エリアの計画上の分譲面積などについてのお尋ねでございますが、現在は平成21年度に策定した事業計画に基づき、土地分譲を進めているところでございます。みなとづくりエリアにつきましては、平成39年度までに全体で78.5ヘクタールを分譲する計画で、平成22年度末までの分譲実績が14.2ヘクタール、進捗率は18%となっております。
 次に、まちづくりエリアについてでございますが、まず、博多港開発株式会社工区につきましては、平成26年度までに全体で80ヘクタールを分譲する計画で、平成22年度末までの分譲実績が62.7ヘクタール、進捗率は78%となっております。市5工区につきましては、平成35年度までに全体で65.4ヘクタールを分譲する計画で、平成22年度末までの分譲実績が2.9ヘクタール、進捗率は5%となっております。なお、まちづくりエリア全体では計画上の分譲面積145.4ヘクタールに対し、平成22年度末までの分譲実績が65.7ヘクタールで、進捗率は45%となっております。これらをアイランドシティ全体で見ますと、分譲計画面積223.9ヘクタールについて、79.9ヘクタールが分譲済みであり、今後、144ヘクタールを分譲していく計画でございます。
 次に、エリアごとの年度別の分譲面積についてでございますが、平成20年のリーマンショック以降、土地分譲は厳しい状況が続いておりまして、みなとづくりエリアにつきましては、平成20年度及び平成21年度は分譲がございませんでした。なお、平成22年度の実績につきましては、5.0ヘクタールでございます。また、まちづくりエリアの分譲実績につきましては、平成20年度が6.7ヘクタール、平成21年度が2.3ヘクタール、平成22年度が4.1ヘクタールでございます。
 次に、アイランドシティ整備事業の事業費などについてでございますが、まず、平成23年度以降の事業費につきましては、現行の事業計画において福岡市工区で832億円、博多港開発株式会社工区で22億円、国工区で84億円、合計で938億円を見込んでおります。
 また、アイランドシティ整備事業に係る借入残額についてのお尋ねですが、まず、福岡市につきましては、平成22年度末における市債発行残高は997億円となっております。また、博多港開発株式会社の平成22年度末における借入残高は117億円となっております。以上でございます。
 
○議長(森 英鷹) 笠康雄議員。
○47番(笠 康雄) まず、福岡前原道路の問題なんですけど、答弁された部分でいうと、ETCを設置するには3カ所で約5億円から10数億円かかるということでした。しかし、一方で福岡都市高速道路は32カ所で38億円なんですよ。だから、何かここだけが突出して高くなっている意図的なものを感じるんですよね。もっと言わせていただくと、そもそも福岡前原道路は採算がとれるから有料道路方式でやったはずなんですよ。とれないのにやるわけないじゃないですか。だから、そういう意味でいうと、福岡都市高速道路も福岡前原道路も同じ有料道路でやっているんだから、どうして最初から一つの運営体でやらなかったのかというような疑問もあるんですよ。まあそれはいいですけど、とにかく今は福岡前原道路、普通車で時速100キロまでいいようになっているんですよ。時速100キロですよ。100キロのところを、料金所は2カ所あって、必ず全部とめるんですよ。だから、高速性を維持しようと思ったら、そんなことしたらいかんじゃないですか。福岡都市高速道路は60キロでしょう。だから、私はETCは今は高速道路には必ずなくてはならない一つのツールだと思っているんですよ。だから、そういう部分で採算がとれないからつくらないとか、そんな話をしちゃいかんと思います。市長、西区の住民ですから市長も関心深いと思いますので、県のほうには強く働きかけてほしいと思います。片一方では、唐津のほうに行ったら無料なんですよね。無料ですから、そこもよくお含みおき願いたいと思います。
 福岡西料金所で都市高速道路へ乗り継ぐ際のETC利用率は約67%とのことですから、下り線でも少なくとも同じくらいのETCの利用が見込まれると同時に、3台中2台の人々は今か今かとETCの設置を待ち望んでいるはずです。せっかくの高速道路ネットワークを活用するためにも、利用者サービスに努め、交通量アップを図るべきではないでしょうか。都市高速道路の整備が進み、その利便性が増していくのはうれしい限りですが、逆に私たち西部地域の住民にとっては、料金問題も含め、ますます福岡前原道路の不便性、不公平感が高まっているのであります。
 そこでお尋ねしますが、前原方面へ向けた下り線のETCについて、現在、都市高速道路への乗り継ぎのETCが設置されている福岡西料金所だけでも設置できないのか、また、ETC問題や料金格差問題の抜本的解決策として福岡前原道路を都市高速道路に編入できないのか、あわせてお尋ねをいたします。
 次に、財政健全化への取り組みについてですが、これまでの健全化の取り組みにより、市債残高の縮減など着実に成果が上がっていることは一定の評価ができるものと考えますが、他都市に比べれば、まだまだ市債の残高は高い水準となっているのではないでしょうか。まず、市民1人当たりの市債残高と政令市における順位はどうなっているのか、お尋ねをします。
 次に、今後の見通しはどうでしょう。国立社会保障・人口問題研究所が平成20年に推計した福岡市の人口は、平成37年ごろまで全体の人口は増加するものの、15歳から65歳までのいわゆる生産年齢人口は、平成27年ごろまでには減少に転じるとの見通しです。こうした年齢構造の変化は、まさに少子・高齢化の本格的な到来を意味し、都市の活力や税収、あるいは社会保障施策などといったさまざまな面で多大な影響を及ぼすことでしょう。さらに、本市では政令市移行期や高度経済成長期を中心にさまざまな公共施設を整備してきたはずです。そうした施設はもう40年を経過しようかという状況です。いやが応でも今後、学校や市営住宅など老朽化した施設の維持や更新に要する費用など多額の支出が必要になってくるのではないでしょうか。
 そこでお尋ねしますが、本市財政はこれまで以上に厳しい状況が見込まれるのではないかと思うわけですが、今後の財政見通しをお示しください。
 次に、アイランドシティの土地売却についてですが、先ほどの答弁にありましたように、土地分譲は進んでいません。このまま手をこまねいているのであれば、アイランドシティは市のお荷物とならざるを得ないのではないか、大いなる危機感を抱くものであります。
 さて、ここで目を転じて、我が国経済と財政を取り巻く現況はどうなのか。国の財政問題は震災以前から議論があったわけですが、このたびの大震災で改めてこの問題の厳しさが浮き彫りになりました。国の財源がどのように確保され、長期的低迷から抜け出していくのか。野田新首相は復興財源として増税にも言及されているようでありますが、もう一つの選択肢である国債の増発もあり得るのです。仮に国内投資志向が弱まれば金利上昇を引き起こし、このことは本市経済、財政にもすぐさま影響してくることなのであります。
 アイランドシティは、平成6年に工事に着手し、銀行借り入れ、あるいは地方債によって調達した資金で工事を行い、商品としての土地を造成してきたのであり、その主な返済原資である土地分譲が進まなければ、これまでの工事のための借金の返済ができません。先ほど申しましたように、金利上昇局面ともなれば、さらに事業費がかさむことになります。一方、土地価格を下げてでもアイランドシティの土地分譲を進めれば、企業立地による税収が生じ、さらには雇用や消費とも結びつき、本市経済と財政に好循環が生み出されるのです。幾ら評価の高い土地だとしても、それがただ資産として持っているだけでは何の価値も見出しません。まさにアイランドシティの早期分譲は市民のため、福岡市の財政のためなのです。先ほどの答弁でも明らかなように、リーマンショック以降、分譲は停滞しております。長引く不況を受けて、当然ながら、アイランドシティ周辺の土地価格は下落しております。こんな経済状況の中で、ただでさえ土地が動くわけがないにもかかわらず、アイランドシティでは分譲計画単価は何ら見直しがされておらず、このことが土地分譲に大きな影響を及ぼしていると言わざるを得ません。
 そこで、アイランドシティの現行計画において、土地価格及び設定の考え方はどのようになっているのか、お尋ねをします。また、土地価格とともにインセンティブ施策は企業誘致の重要な要素でありますが、アイランドシティにおいて企業立地促進交付金は活用されているのでしょうか、これまでの実績をお尋ねします。
 以上で2問目を終わります。
 
○議長(森 英鷹) 井上道路下水道局長。
○道路下水道局長(井上隆治) 福岡前原道路の料金所についてお答えいたします。
 福岡西料金所へのETC設置についてでございますが、現在設置されております福岡西料金所上り線のETCは、あくまで都市高速道路の入り口として整備されたもので、下り線へのETC設置に当たりましては、設置や運営に要する費用に対する経済的評価は無論のこと、福岡前原道路の料金徴収方法がどうあるべきか、福岡市から糸島市にまたがる路線全体で検討すべき課題であり、特定の箇所だけに設置することは現状では困難であると福岡県道路公社から伺っております。
 次に、福岡前原道路の福岡都市高速道路への編入につきましては、福岡県道路公社、福岡北九州高速道路公社並びに設立団体であります福岡県、福岡市等で協議する必要がございますが、有料道路の交通量の伸びが余り期待できない中、福岡前原道路の多額の未償還額の取り扱いや編入に伴います都市高速道路の長期的な採算性等、経営的な観点からの検討が必要であるなど、現時点での編入は課題があると考えております。ただ、福岡市といたしましても、利用者サービスは重要であると考えており、御指摘を踏まえ、利便性の向上について福岡県及び福岡県道路公社と協議してまいりたいと考えております。以上でございます。
 
○議長(森 英鷹) 野見山財政局長。
○財政局長(野見山 勤) まず、市民1人当たりの市債残高についてのお尋ねでございますが、平成22年度末では約174万円となっております。また、政令市における順位につきましては、平成21年度末時点で18都市中、金額が多いほうから2番目となっております。
 次に、今後の財政見通しについてのお尋ねでございますが、まず歳入面では、地域の経済情勢や雇用環境は依然として厳しく、加えて東日本大震災に伴う日本経済の影響などを踏まえますと、市税収入の大きな伸びは期待できないことなどから、今後の一般財源の見通しにつきましては、平成23年度当初予算と同程度の3,900億円前後で推移するのではないかと考えております。一方で、歳出面におきましては、義務的経費である扶助費について、平成23年度の当初予算では1,749億円余と前年度と比較いたしまして約245億円の増加となったところでございますが、少子・高齢化の進行などに伴い、今後も着実に増加していくことが見込まれております。また、団塊世代の大量退職期の到来に伴う人件費の増加、さらには、これまでに発行した市債の償還である公債費も当面は1,000億円程度で高どまりすることが見込まれております。このように、一般財源の大幅な増加が見込めない中で扶助費を初めとする義務的経費が着実に増加し、さらに議員御指摘のとおり、学校や市営住宅などの大量更新期の到来に伴いまして、維持更新費用の増嵩も見込まれております。こういうことから、今後の財政見通しにつきましては、一層厳しさを増していくものと見込んでおります。以上でございます。
 
○議長(森 英鷹) 松本港湾局長。
○港湾局長(松本友行) アイランドシティ事業計画における土地価格及び価格設定の考えについてのお尋ねにお答えいたします。
 現行の事業計画における分譲計画単価につきましては、計画策定時までの契約実績やアイランドシティ周辺地域での取引事例、専門家の意見を参考にして設定いたしております。設定に当たりましては、各エリアごとに、また、まちづくりエリアについては土地利用の用途ごとにそれぞれ単価を設定いたしております。
 分譲計画単価についてでありますが、みなとづくりエリアにつきましては、1平米当たり13万円とし、用途が基本的に物流関連施設用地に限定されていることなどから、分譲の最終年度まで単価は同一といたしております。まちづくりエリアにつきましては、現行計画初年度を基準といたしまして、分譲計画単価を戸建て住宅用地で3万5,000円、集合住宅用地で10万4,000円、複合用地で12万2,000円、センター地区で12万5,000円、産業用地で12万5,000円、道路・公園用地で8万5,000円、小学校・公民館用地で10万4,000円と設定し、まちの骨格となる道路、公園等の都市基盤整備の進捗や、それに伴う住宅地の形成、企業立地によるまちの熟成の高まりとともに、一定の単価上昇を見込んでおります。なお、実際の土地分譲に当たりましては、福岡市不動産価格評定委員会による評定を踏まえた単価によっているところでございます。以上でございます。
 
○議長(森 英鷹) 中島経済振興局長。
○経済振興局長(中島淳一郎) アイランドシティでの企業立地促進交付金の実績についてお答えいたします。
 アイランドシティにつきましては、IT分野など知識創造型産業、外国・外資系企業によるアジアビジネス分野及び国際港湾機能を生かした物流関連業などを戦略的に集積させる重点地域として位置づけており、企業立地促進交付金制度の充実強化に努めております。この交付金制度につきまして、アイランドシティに立地した企業への適用実績でございますが、株式会社日本サイバー教育研究所、伯洋海運株式会社及び医療法人社団杏林会の3社に対して交付金を支出したところでございます。以上でございます。
 
○議長(森 英鷹) 笠康雄議員。
○47番(笠 康雄) まず、福岡前原道路の料金所についててすが、私はこの道路を通るたびに何とか利便性の向上を図る策はないのかと、あるいは料金徴収方法の改善はできないのかと考えておるところであります。
 そこで、私のほうから3つの提案があります。
 1つ目は、八木山バイパスのようにコイン投げ込み方式により無人化できないかということです。八木山バイパスは普通車で520円なので、最低3個のコインが必要ですが、西料金所は150円ですから、2個のコインで済みます。これにより、料金所の現金収受のための人員が削減でき、コスト縮減が図られると同時に、その浮いたお金でETCの設置もしやすくなるのではないかと思われます。
 2つ目は、回数券の専用レーンを設けられないかということです。現在、福岡西料金所の下り線での回数券利用率は約11%とのことですが、専用レーンの設置によりスムーズに料金所が通過できるとなれば、回数券の利用率が高まり、混雑緩和が図られるのではないかと考えます。
 3つ目は、今宿ランプの出口に料金所を設置できないかということです。既に今宿ランプの出口は料金所設置を視野に入れ、構造上、幅員が大きく広くとられており、新たな拡幅工事の必要はありません。これにより、福岡西料金所の下り線の料金徴収が不要となり、本線上での料金所は前原の1カ所になり、大変便利になります。
 以上は今回初めて提案するものですが、いずれも大きな費用を必要とせずに利便性の向上や混雑緩和を図ることができると同時に経費節減につながり、営業利益の向上に大きく寄与するのではないかと思います。福岡前原道路は、福岡県道路公社が管理主体ではありますが、本市も74億円を出資しているとのことであり、市民利用者のサービス向上を図っていく必要があると考えますので、以上の提案を福岡県道路公社に対し、働きかけていただくよう強く要望しておきます。
 次に、財政健全化への取り組みについてですが、財政局長からの答弁にありましたように、税収を初めとする一般財源は伸びない中で、扶助費や人件費といった義務的な経費は確実に増加していくとのことです。また、市債残高も他都市に比べてまだまだ高い水準にあります。しかも、そうした中にあって、公共施設の建てかえなどに伴う新たな投資も必要になるとのことです。しかし、こうした新たな投資に振り向ける財源は本当に捻出できるのでしょうか。寿命が来た公共施設を建てかえなければならない状況は、福岡市としては初めての経験になるはずです。仮に当時建設したものと同程度の規模でつくり直すとしても、40年前の事業費とは比べ物にならない費用がかかることでしょう。
 一方で、島市長は現在、将来ビジョンや成長戦略などについて検討を進められていると伺っております。将来に向けて夢を抱き、必要な成長分野には集中的に投資していくことにより、福岡市が今後とも元気で生き残っていくという発想はごもっともであり、とても大事なことです。しかしながら、冒頭にお話しした国の状況や今後の市の財政見通しを伺う限り、そんなところに回すお金なんて、一体どこにあるのでしょうか。このままでは老朽化した施設の更新すらおぼつかないのではないでしょうか。都市経営は、民間経営と同様に先を見据えてやっていく必要があります。新たな投資を行うためには、その前に抜本的な改革に取り組み、無駄を極限まで削る努力が必要です。例えば、本市には現業職員が約1,000名程度いますが、これを思い切って民間に任せる。民にできることは民でやるべきです。それだけでも、私から言わせていただければ、コストを半分以下に下げることができます。職員1人当たりの人件費を共済費等を含めて仮に約1,000万円とすると、約50億円もの削減ができるのです。もちろん、現在の職員の身分の保障をすることは当然であります。
 これまでも既にさまざまな改革を実施してきている中で、今後、さらに見直しを行おうとするならば、人件費も含め、聖域なく切り込んでいかなければいけない状況なのです。今のこの日本の状況では、いつ諸外国のマーケットから見限られるとも限りませんし、ギリシャの状況も決して他人事ではないのです。そうなれば、国も地方も大変なことになるのは目に見えています。マーケットは、政治の力だけではコントロールすることはできません。だからこそ、今、危機感を持って自治体でできることを確実に取り組んでいかなければなりません。この難局をどう乗り越えていくおつもりなのか。
 かつて政府の第二次臨時行政調査会の会長を務められた土光敏夫氏は、東芝の社長に就任し、事業再建に取りかかったときのあいさつでこう述べられています。「諸君にはこれから3倍働いてもらう。役員は10倍働け。俺はそれ以上に働く」、また、「やるべきことが決まったならば執念を持ってとことんまで押し詰めよ。問題は能力ではなく執念の欠如である」と。要は、上に立つ者ほど死ぬほど努力をしなくてはならないということです。市長は、もはやサラリーマンではなく、福岡市という大企業の社長です。不退転の決意とリーダーシップの発揮が求められていますので、財政健全化に向けた市長の決意をお伺いいたします。
 次に、アイランドシティの土地売却についてですが、先ほどの局長答弁では、土地は鑑定評価、イコール市場価格で売ると言いながら、いつの間にか固定相場になっていたところに問題があるのです。今日まで土地分譲がうまくいかなかった最大の理由は、土地の販売単価が固定化し、全く市場の動向を考慮していないことにあると思います。その理由は、今までにかかった総費用を土地売却収入で補う仕組みで、一般会計からの財源投入は一切しないという呪縛から今も解き放たれていないというところにあると思います。これまで土地分譲状況と土地価格について問うてきたわけですが、最後に事業の経営的な視点からお尋ねいたします。
 今後、約144ヘクタールを分譲するとの答弁でしたが、この中にはまだ土地ができていない面積も含まれているのです。国際海上コンテナ取扱量が順調にふえつつある中、重点的な投資をすべきなのは、バースやヤードなどの港湾施設であり、アイランドシティの中では最後の分譲区域となる市4工区の土地造成については、現在、造成が済んでいる土地の分譲状況を踏まえながら工事を進めるべきであります。今ある土地の分譲がうまくいかない中で新たな商品をつくり出しても、在庫がふえる一方であります。どこにお金を入れていくべきなのか、市はもっと経営的な観点で事業を進めていくべきであり、市4工区は埋め立てを当分の間、凍結すべきと考えますが、御所見をお尋ねします。
 また、長引くデフレ不況で周辺の土地価格が下落しているだけではありません。東区内で見てもアイランドシティ周辺には香椎副都心や箱崎の九大跡地など、土地分譲に当たってアイランドシティと競合するまとまった土地があり、土地供給上の圧力は非常に高いのであります。この点からも土地価格を下げる必要があるのです。売り手である市が値段を決めるのではなく、買い手のニーズに値段を合わせていかなければ土地分譲は進みません。先ほどの局長答弁にありますように、この3年間、みなとづくりエリアは民間には1カ所も売れていません。インセンティブ施策である立地交付金もほとんど活用されていません。市は、実勢をきちんと踏まえた土地価格で分譲するというアナウンスをしっかりし、場合によっては特別会計の中だけで事業を進めていくという呪縛から解き放たれて進めていくくらいの責任と気概を持たなければ、アイランドシティは市民にとって足かせ、福岡市停滞の要因になってきます。もっとも、土地価格を下げても分譲はかなり厳しい状況にあるとも思っています。また、一般会計からの繰り入れを行うならば、この事業の見通しがつくまで事業を推進してきた立場の行政や議会は特別会計の中でやっていくと繰り返し言ってきた以上、それなりの責任を負うべきとも考えます。そうしないと、市民が納得しないでしょう。フォーラムで意見を聞かれることも結構ですが、今、市がすべきことは土地分譲を本気で推進することであります。
 最後に市長の決意のほどをお伺いいたしまして、私の質問を終わります。
 
○議長(森 英鷹) 松本港湾局長。
○港湾局長(松本友行) アイランドシティの市4工区は埋め立てを当分の間凍結してはどうかとのお尋ねにお答えいたします。
 同工区につきましては、コンテナターミナルと一体となった国際物流拠点の形成を図るために必要なエリアであると考えております。同工区の埋立工事に当たりましては、最適な施工方法の選択や工事工程の工夫によりまして、当初計画から事業費の縮減や平準化を図っているところでございます。今後とも、分譲の状況や資金計画を見据えた経営的な観点を持って事業を推進してまいります。以上でございます。
 
○議長(森 英鷹) 島市長。
○市長(島宗一郎) 財政の健全化についてお答えをいたします。
 笠議員の御指摘のとおり、今後の財政の見通しは極めて厳しいものと認識をしておりますが、私は厳しい財政状況の中にあっても、経済的な成長と安全、安心で質の高い暮らしのバランスがとれた人と環境と都市の調和のとれたまちづくりの実現に向けて、真に必要な施策は着実に取り組んでいく必要があると考えております。そのためにも、市債発行額を中期的に抑制をして、そして、市債残高の着実な縮減に努めますとともに、義務的経費を含めた経常的経費の徹底した見直しや多様な財源の確保、また、選択と集中による投資の重点化を図るなど、これまで以上に財政健全化の取り組みを進めていくことが重要であると考えておりまして、現在進めています福岡市の新ビジョンや成長戦略などを踏まえながら、財政規律と投資のバランスがとれた財政運営に努めてまいります。
 アイランドシティ整備事業は、市民の暮らしと直結する博多港の機能強化の一翼を担っておりまして、福岡市にとって重要な事業でございます。先生御指摘のとおり、今、日本はリーマンショック、そして東日本大震災と引き続く困難に直面して、先行きが混沌とした状況にございます。このような中、福岡市はアジアに近いという特性を生かしてアジアの活力を取り込み、そして、福岡や九州の発展、ひいては日本の復興にも貢献することも視野に入れて、市政を運営していきたいと考えております。その方策の一つとして、アイランドシティという都心に近いこの広大な土地をいかに活用していくのかは極めて重要な課題であると認識をしております。このため、アイランドシティ・未来フォーラムにおきましては、アイランドシティが福岡市において果たす役割ですとか、土地利用のあり方などについて、事業推進上の課題も踏まえてまちの魅力向上やまちづくりを先導する都市機能、そして、企業のニーズに応じた立地促進策などをさまざまな立場の方々とともに多面的に検討して、そして、議会や市民の理解、そして共感を深めてまいりたいと考えております。
 今後のアイランドシティの土地分譲に当たりましては、経済状況の先行きが不透明な中、これまで以上に事業環境の的確な把握に努め、フォーラムにおける議論も踏まえながら事業を確実に推進していきたいと考えております。以上です。




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