笠 議員の質疑と答弁 | ||
◯笠委員 みらい福岡市議団を代表し、日本の農業政策と本市の農業振興について及び市街化調整区域における定住化促進について、以上2点について質問する。まず、日本の農業政策と本市の農業振興についてだが、我が国の農業は高齢化の進行や担い手不足などにより厳しい状況が続いており、国は農業者の所得向上を図るため、農地の集積、集約化による生産性向上や輸出による販路拡大、6次産業化による付加価値向上などを推進している。また、平成27年3月に策定した食料・農業・農村基本計画では、食料自給力や食料自給率の向上を目指し、強い農業と美しく活力ある農村を創出していくこととしている。本市の農業の現状については、農家経営者の平均年齢は28年度が71.2歳であり、前年度の70.8歳からさらに高齢化が進んでいる。また、平成28年の農業従事者数は3,368人であり、前年の3,543人から175人減少しており、このままのペースで減少が続けば10年後には半減することになる。さらに、農地面積も毎年減少を続け、平成28年の農地面積は2,642ヘクタールであり、前年から24ヘクタール減少している。このように本市の農業を取り巻く情勢は非常に厳しく、このままでは衰退の一途をたどり、極端に言うとなくなってしまうのではと危惧している。衰退の最大の原因は、農家の所得の低さだと考える。本市の1世帯当たりの農業所得は、農林水産省の統計をもとに推計すると平成27年は約148万3,000円であるが、この所得では専業農家は経営が成り立たず、農業の担い手不足に拍車をかけている状態にあると言える。そこで、農業所得の向上の観点から、国が推進する農林水産物、食品の輸出と食料自給率の向上を取り上げ、現状と課題及び本市の農業振興に関する今後の方向性について質問していく。まず、国の輸出促進の方向性や目標について尋ねる。 △農林水産局長 平成28年5月に取りまとめられた農林水産業の輸出力強化戦略において、少子・高齢化の進行により国内の食市場は縮小が見込まれる一方、アジアを中心とした新興国では経済成長や人口増加が進んでおり、今後、海外において食の需要が拡大すると見込まれている。輸出は農林水産物、食品の販路拡大につながる重要な手段であり、農林漁業者等の意欲的な取り組みを支援するなど、輸出力強化に取り組んでいくこととされている。また、農林水産物、食品の輸出額については、平成24年の約4,500億円を平成31年までに1兆円とする目標が掲げられている。 4 ◯笠委員 平成24年からの7年間で輸出額を2倍以上に拡大するという大きな目標を掲げているが、農林水産物、食品とひとくくりに言っても、農産物や水産物、畜産物などさまざまな品目が含まれている。農産物のうち、米や青果物の輸出における国の目標について尋ねる。 △農林水産局長 平成28年に取りまとめられた品目別の輸出力強化に向けた対応方向によると、米については中国向けの輸出拡大や、高付加価値米、パック御飯、お粥といった商品及び販売方法の多様化などにより、平成27年の輸出額22億3,000万円を平成31年までに600億円とする目標が掲げられている。また、青果物については統一ロゴマークの活用によるジャパンブランドの定着や、香港、台湾の富裕層をターゲットにした取り組みの推進などにより、リンゴは平成27年の輸出額134億円を平成31年までに140億円に、イチゴは平成27年の8億円を平成31年までに14億円にするなどの目標が掲げられている。 ◯笠委員 重点品目や、品目ごとの重点国、地域、目標額など輸出拡大に向けた具体的な経営戦略を立てているようだが、国は輸出額を増加させていく上で、どのような課題があると考えているのか尋ねる。 △農林水産局長 現地のニーズに対応するための情報収集と販路開拓、新鮮な農産物の品質を保持したまま、より多く、安く海外へ運ぶための物流体制の整備、また、輸出先の国や地域が求める食品安全規格や認証等の取得、検疫条件などの基準への適合などが課題として挙げられている。 ◯笠委員 さまざまな課題があるということだが、さらに、輸出国との外交関係や国際情勢による影響もある。また、安全基準については、最近では平成23年3月の東日本大震災の影響により、多くの国や地域において日本産農林水産物、食品の輸入停止や放射性物質の検査証明書等の要求がなされるなど、今もなお輸入規制措置が実施されていると聞いているが、東日本大震災の影響による輸入規制の現状はどうか。また、本市や県の農産物の輸出に影響はないのか尋ねる。 △農林水産局長 平成29年版の食料・農業・農村白書によると、平成29年3月末時点における主な輸出先国、地域の輸入停止措置の例として、香港、アメリカ、台湾、中国、韓国における日本産農林水産物、食品の輸入停止や放射性物質の検査証明書等の要求、検査の強化といった輸入規制措置が例として挙げられている。また、本市や県の農産物の輸出への影響については、事業者への聞き取りにより、影響は出ていないと認識している。 ◯笠委員 影響はないとのことだが、特にヨーロッパなど海外では、九州産や県内産でも全て日本産というくくりで認識されているというリスクも想定する必要がある。海外への輸出展開には課題も多く、簡単ではないように思うが、本市の輸出の現状はどうなっているのか。平成28年2月に開場したベジフルスタジアムにおける農産物の輸出状況について、28年度における輸出先、輸出品目、輸出額、また、そのうち市内産の状況を尋ねる。 △農林水産局長 市場内で取引された後の青果物の流通先の把握は困難であるが、ベジフルスタジアムの卸売業者を中心とした輸出の取り組みとして、28年度は香港に約2億円の農産物を輸出しており、主な品目はイチゴが約1億円、カンショが約5,000万円となっている。また、財務省の貿易統計によると、平成28年に福岡空港から約8億円、博多港から約15億円、合計で約23億円の青果物が輸出されており、輸出額が多い上位3カ国、地域は香港、台湾、中国であり、輸出額が多い上位3品目はイチゴ、キノコ類、カンショである。福岡都市圏内で流通する農産物の大半がベジフルスタジアムを経由していることを考えると、約23億円のかなりの部分が本市の市場経由で輸出されているものと考えている。なお、ベジフルスタジアムで取り扱う農産物に占める市内産の割合は約3%となっている。 ◯笠委員 市内産の割合である約3%という数字をもとに単純計算すると、福岡空港及び博多港からの輸出額約23億円のうち、市内産農産物の輸出額はわずか約6,900万円となる。このような現状を踏まえ、ベジフルスタジアムでは輸出に関してどのような取り組みを行っているのか、また、本市における今後の輸出に関する取り組みを尋ねる。 △農林水産局長 ベジフルスタジアムでは平成27年4月に設置した新青果市場ブランド推進委員会において、海外マーケットの開拓に取り組むこととしており、平成28年11月には香港でのトップセールスを開催するなど、海外向けプロモーションを行ってきた。今年度は新たに、生産者に輸出の機会を提供するため、海外バイヤーとの商談会を実施し、海外マーケットの開拓による新たな販路の開拓や、商品価値及び生産者の意欲の向上を図るベジフルスタジアムマッチング事業を実施することとしている。今後とも多様な流通ルートの一つとして、ベジフルスタジアムにおける輸出の取り組みを通じ、市内産農産物の販路拡大を図っていく。 ◯笠委員 輸出の取り組みを否定するわけではないが、市内産農産物の輸出額はわずかであり、現状では輸出が生産者の所得向上につながるとは言いがたいのではないか。日本の農政にとって最も大事なことは食料自給率の向上ではないかと考えるが、我が国の食料自給率の現状及び推移を尋ねる。 △農林水産局長 28年度の国の食料自給率はカロリーベースで38%である。長期的に低下傾向で推移していたが、9年度以降は40%前後で推移している。 ◯笠委員 食料自給率について国はどのような目標を定めているのか尋ねる。 △農林水産局長 食料・農業・農村基本計画において、目標年度の37年度にカロリーベースで45%と定められている。 ◯笠委員 約5%向上させるとのことだが、食料自給率を高めるため、国は現在どのような施策を進めているのか尋ねる。 △農林水産局長 食料・農業・農村基本計画によると、重点的に取り組むべき事項として食料消費及び農業生産が掲げられており、食料消費については国内外での国産農産物の需要拡大や食育の推進、食品に対する消費者の信頼の確保に取り組んでいくこととされている。また、農業生産については優良農地の確保と担い手への農地集積、集約化、また、担い手の育成、確保、農業の技術革新や食品産業事業者との連携等による生産、供給体制の構築等の実現に取り組んでいくこととされている。 ◯笠委員 現在の食料自給率が38%ということは、残りの62%は海外からの輸入に頼っているということだが、野菜における食料自給率は幾らか。また、野菜の輸入状況及び輸入相手国を尋ねる。 △農林水産局長 野菜における28年度の食料自給率はカロリーベースで76%である。農林水産物輸出入概況によると、平成28年における輸入量が多い野菜上位5品目及び主な輸入相手国、地域は、1位がタマネギで主な輸入相手国は中国、ニュージーランド、2位がカボチャでメキシコ、ニュージーランド、3位がニンジン及びカブで中国、オーストラリア、4位がネギで中国、ベトナム、5位がゴボウで中国、台湾である。 ◯笠委員 食料全体の自給率と比較すると野菜の自給率は高いが、輸入されている野菜には本市でも生産されているタマネギやカボチャ、カブ、ネギなどの品目も含まれている。国内に野菜のマーケットはあるはずであり、鮮度が命の野菜については海外からの輸入を国内産や市内産野菜に置きかえていき、自給率100%を目指すべきではないか。本市の強みは、約156万人の市民のみならず国内外から多くの来訪者があるなど恵まれたマーケットを有することであり、農産物の国内での消費拡大を図れば、食料自給率を高めることにもつながる。市内には北崎の大根やスイカ、今津や元岡のイチゴ、トマトや春菊、入部のキャベツ、早良区南部のカツオ菜などブランド野菜がたくさんあるが、ブランド価値をさらに高めるためにはどうすればよいか。例えば「FUKUOKAブランド」としてPRしていくことや、最近は、農家が生産者や農場の名前を野菜につけるなど独自のブランドを確立して他の野菜との差別化を図ることで高値での販売に成功している事例もあるため、他都市の成功事例等もしっかり研究されたいと考える。また、消費者も安さだけを追い求めるのではなく、多少高くても新鮮で安全、安心な市内産の農産物をさらに消費していき、飲食店はさらに市内産農産物を活用して発信していくなど、消費者も食に対して考え直す必要がある。丁寧に、大切に、手間暇かけてつくられた野菜にコストがかかるのは当然であり、適切に評価する風土をつくっていくなど本市全体で本市の農業を守り、育てていくという機運をしっかりと醸成していくべきである。さらに、食育を通じて本市でとれる食材を日々の食事に生かして食を楽しむとともに、本市の食文化を未来に伝える取り組みを進めていく必要がある。農業は国の施策であり、安定的な食料供給を行うことは国の責務であるが、国策を支えるはずの農業の担い手は減少し続け、本市の農業の衰退は待ったなしの状況に追い込まれている。本市の農家が将来に夢を持ち、次代の若者に農業を継承できるよう、生産者の所得向上に向けて本市ならではの取り組みをしっかりと進めていくべきである。今後、農業に関する予算確保も含めて本市の農業振興に頑張って取り組まれたいというエールを送るとともに、本市として今後、農業振興にどのように取り組んでいくのか、決意を尋ねてこの質問を終える。 △農林水産局長 農業従事者の高齢化や後継者不足など厳しい状況が続いている中、本市の農業を活性化し、持続的に発展させていくためには、人口156万人の大消費地を擁していることや第3次産業が集積していることなど、本市の強みを生かして施策を展開していくことが重要だと認識している。また、本市の新鮮で安全、安心な農産物を市民に提供していくためには、農業者による生産性の向上への意欲的な取り組みを支援するとともに、新たな担い手の確保を図っていくことが重要だと考えている。ことし3月に策定した農林業総合計画の目標である、農業所得の向上と都市型農業の多面的機能の発揮の実現に向け、6次産業化やブランド化による付加価値の向上及び販路拡大、地産地消の推進など、本市の農業振興にしっかりと取り組んでいく。 ◯笠委員 次に、市街化調整区域における定住化促進について質問する。先日、新聞報道により全国の基準地価が公表されたが、商業地では全国的に上昇幅が拡大しており、特に本市では天神ビッグバンによって成長が見込まれる明治通り沿いが、西通り沿いを抜いて九州一の基準地価となった。これは市長が進める都市の成長が高く評価されての結果だと受けとめているが、商業地域を含む市街化区域だけでなく、豊かな自然環境と農地から成る市街化調整区域も都市の一部として欠かすことのできない地域であることを忘れてはならない。今日の都市の暮らしでは、単なる経済成長だけでなく生活の豊かさも重要であり、人々の生活を維持していくためには衣食住が重要であるが、中でも住と食は市街化調整区域とのかかわりが深いものである。本市の産物として挙げられる、海の幸や山の幸など豊かな自然がもたらすさまざまな食材の産地は市街化調整区域の農山漁村地域であるが、農地を守る市民が暮らす市街化調整区域では人口減少や高齢化が進み、既存集落の維持が困難な状況になっている。このような背景のもと、市街化調整区域における定住化の問題について質問していくが、まず、市街化区域と市街化調整区域それぞれの役割、区域面積及び比率について尋ねる。 △住宅都市局長 本市などの一定規模以上の都市については都市計画法に基づき、一体の都市として総合的に整備、開発及び保全する必要がある都市計画区域について、市街化区域と市街化を抑制すべき市街化調整区域との区分を定め、無秩序な市街地の拡大による環境悪化の防止及び計画的な公共施設の整備などによる良好な市街地の形成を図ることとされている。市街化区域は、既に市街地を形成している区域及びおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街地を図るべき区域である一方、市街化調整区域は原則として市街化を抑制し、自然環境の保全に配慮する区域であり、主に農地や森林などに利用されている。本市においては昭和45年から区域区分を定め、28年度末現在、都市計画区域約3万4,000ヘクタールのうち、市街化区域が約1万6,300ヘクタールで約48%、市街化調整区域が約1万7,700ヘクタールで約52%となっている。 ◯笠委員 市街化調整区域は、人間が生きていく上で必要な自然環境を維持し、命の源となる食物の生産基地として大変重要な役割を担っており、市街化調整区域が市街化区域を支えて都市全体が成り立っているが、今、市街化調整区域では人口減少や少子・高齢化の進展によって耕作放棄地や空き家がふえ、自然環境や農地の維持が困難な状況になっている。一旦、耕作放棄地となれば、再び農業を行うには地力の復元に大きな費用と手間暇がかかるため、農地に戻すことが困難な状態となり、結果として農業が弱体化し、農業の担い手がさらに減ることで耕作放棄地がふえるといった悪循環に陥っていく。農林水産省が推進する攻めの農業などとはほど遠い状況になっており、悪循環の原因として、市街化調整区域における人口減少があるように思うが、本市全体及び市街化調整区域内の人口の推移について尋ねる。 △住宅都市局長 5年ごとに行われる国勢調査の結果によると、本市全体の人口の推移については平成22年が約146万4,000人、平成27年が約153万9,000人であり5.1%増加している。また、市街化調整区域の人口の推移については平成22年が約3万8,700人、平成27年が約3万7,400人であり3.4%減少している。 ◯笠委員 日本全体が人口減少社会と言われる中、いまだに人口が増加して元気な都市と言われる本市においても、市街化調整区域では急速に人口減少が進んでいる。豊かな自然や農地を守るため、市街化調整区域に住む人たちを維持していかなければならないという考えのもと、定住化の取り組みについて質問していくが、まず、市街化調整区域のまちづくりに関係する28年度の決算額を尋ねる。 △住宅都市局長 住宅都市局における取り組みとしては、定住化促進に係る支援策の検討など205万2,000円である。 ◯笠委員 予算の多寡は別として、市街化調整区域のまちづくりに継続的に取り組んでいることは評価する。先ほど市街化調整区域の人口減少について答弁があったが、農業を維持するためには一定の居住人口が必要である。集落では出方と称して、水路やため池の清掃や道路の草刈り、空き缶拾いなどを地域住民総出で行っているが、集落に一定の人口があるからこそできることである。以前から指摘していることだが、本市の継続的な取り組みにもかかわらず、人口が減り続けている要因の一つは市街化調整区域の厳しい建築規制にあると思うが、どのような建築規制があるのか尋ねる。 △住宅都市局長 市街化調整区域は原則として市街化を抑制し、自然環境の保全に配慮する区域であることから、開発許可の基準として都市計画法第34条に示されている用途の建築が限定的に認められている。開発許可などにより建築できるものとしては例えば、既存集落におけるコンビニや食堂など日常生活に必要な店舗や、市街化調整区域に指定される以前から住んでいる人の子などの住宅である、いわゆる分家住宅などがある。なお、同法第29条において、農家住宅や農業用倉庫など農林漁業を営む上で必要不可欠な建物や、公民館、交番など公益上必要な建物及び既存住宅の建てかえなどについては、開発許可を受けずに建築できることとなっている。 ◯笠委員 建物の用途が限定されており、既に宅地であっても新たな住宅を建てることはできないため、移住者もほとんどなく、集落の人口は減少する。また、若い世帯が新たに移住してこないため、高齢化率は高くなる一方であり、このままでは市街化調整区域の集落、農地や自然環境を維持できなくなるのではと真剣に危惧している。農林漁業従事者の住宅などは建築できるとの答弁であったが、住宅以外の農林水産業に関係する建築物について、規制緩和が行われたと聞いているが内容を尋ねる。 △住宅都市局長 例えば農産物販売所については、これまで生産者みずからが営むもの以外は建築できなかったが、平成28年6月に開発許可基準を改正したことで、農林水産業が主たる産業で、人口減少や1次産業の担い手不足が深刻化している8カ所の小学校区において、農林水産業や観光業などの地域産業の振興に寄与する施設として、生産者以外が営む農産物販売所の建築が可能になるとともに、これまで認められていなかった農家レストランや農業研修施設などについても開発許可などによって建築が可能になっている。 ◯笠委員 働く場所をつくることはもちろん大切だが、まずは将来、農林水産業を支えていく人たちや、豊かな自然に囲まれて住みたいと考えている人たちが住むことができる環境を整えることが重要である。定住化の促進に取り組むことが最も重要な課題ではないかと考えるが、定住化促進のため、これまでにどのような規制緩和を行ってきたのか尋ねる。 △住宅都市局長 高齢化や人口減少などの課題を抱える既存集落において、区域を指定し、一定の要件を満たせば誰でも住宅や店舗などの建築が可能となる区域指定型の制度を2種類定めている。一つは、平成16年4月に市開発行為の許可等に関する条例を制定し、都市計画法第34条第11号に基づき、原則として市街化区域に隣接または近接し、おおむね50以上の建築物が集積した地域のうち、6メートル以上の道路幅員が確保されていることなどを要件とする区域指定型制度である。もう一つは、同法第34条第12号に基づき、平成27年9月に同条例の一部改正を行い、道路等に関する要件を一部緩和して運用を開始した区域指定型制度である。また、平成26年10月には既存集落における定住化促進策として、空き家となっている戸建て住宅を有効活用し、賃貸住宅に変更できるよう基準を改正している。 ◯笠委員 時代の変化に応じて基準を改正し、規制緩和を続けてきたことは大変評価している。中でも区域指定型制度は区域指定により、農林漁業従事者だけでなく誰でも住宅を建てたり、借りて住んだりすることができる制度であり、定住化促進に役立つのではと考えているが、2種類の制度について取り組みの成果を尋ねる。 △住宅都市局長 第11号に基づく区域指定型制度については、平成25年6月に今津地区において約4.9ヘクタールの区域を指定し、これまで22戸の戸建て住宅について許可を行った。第12号に基づく区域指定型制度については、これまで志賀島と今津の2地区において指定を行っており、志賀島地区については平成28年8月に約5.7ヘクタールの区域を指定し、1件の店舗について許可を行った。また、今津の浜崎地区については平成29年6月に約5.1ヘクタールの区域を指定し、1戸の戸建て住宅について許可を行った。さらに今後、今津の緑町地区や今宿の上ノ原地区など数件の指定を予定しているところである。 ◯笠委員 第11号に基づく区域指定型制度は、道路が高水準に整備されているという区域の指定要件が大変厳しく、要件を満たす集落が少ないため、平成16年の条例制定以降1地区しか活用されていないと考える。よって、本市は平成27年9月に条例を改正して第12号に基づく区域指定型制度をつくったと認識しており、道路等に関する厳しい要件がないため地元でも大変期待されていた。しかし、第12号に基づく区域の指定要件についても大きな疑問を抱いているが、要件を尋ねる。 △住宅都市局長 主な要件としては、市街化区域と市街化調整区域との区分を定める前から、一体的な日常生活圏を構成していた大規模な集落である指定既存集落内において、区域に係る現在の人口が平成7年の国勢調査の結果と比較して減少していること、また、おおむね50以上の建築物が集積していること、さらには、地域住民による合意形成がなされていることなどである。 ◯笠委員 指定既存集落はもともと大規模な集落でありインフラにも余力があるため、対象地域とすることは納得でき、人口減少や地域による合意形成を要件としていることも本市の立場からすれば妥当かもしれないが、おおむね50以上の建築物が集積していることという要件については納得いかない。市街化調整区域では人口減少や高齢化が急速に進行し、最近では既存集落の中でも明らかに手入れがされていない空き地や荒れ地がかなり目立つようになっている状況で、50以上の建築物の集積という要件は地域の実情と合っていないのではと考える。定住化の促進を図るのであれば、地域住民の気持ちをしっかりと受けとめながら、積極的に区域指定していくという前向きな姿勢が必要ではないか。第11号に基づく区域指定型制度のように、指定要件が地域の実情に合わないために指定が進まなかったということを繰り返してはならない。第12号に基づく区域指定型制度について、より多くの集落で活用できるよう要件を見直すべきだと考えるが所見を尋ねる。 △住宅都市局長 第12号に基づく区域指定型制度については既に指定済みの2地区に加え、今後新たに数件の指定が見込まれているが、中には、区域内にある建築物の数が要件を満たさず、区域の範囲などを見直した地区もあるため、今後、区域を指定するに当たっては指摘も踏まえ、市街化調整区域の定住化を促進するという制度の趣旨や地域の実情を十分に勘案しながら、おおむね50以上の建築物が集積していることなどの要件について、弾力的な運用を検討していく。 ◯笠委員 弾力的な運用については評価したい。市街化調整区域における規制緩和についてはこれまで議会で何度も質問し、地域住民からも多くの相談に乗ってきたが、開発許可制度は理解が難しい制度だということを感じており、区域指定型制度も同様に制度内容を理解するのが容易ではない。本市はパンフレットなどを活用し、わかりやすく伝えようと努力しているが、そもそも内容が難し過ぎて市民にはとても理解できず、実際に住民に尋ねてみても、説明を受けているにもかかわらず制度を知らない人が多いのが実情である。要件について検討していくとの答弁であったが、残念ながら、それだけでは定住化の促進には十分ではない。例えば、地域内で区域指定に向けた話し合いをしようとしても、高齢化や人手不足のため音頭をとる住民がおらず、手続に長い時間と労力を要することも高齢者にとっては抵抗感が強い。これが市街化調整区域の集落に暮らす住民の実情であり、本市が取り組んでいる定住化促進策よりもかなり速いスピードで集落の衰退は進行しているため、本市には、集落が置かれている現実を十分に把握してほしい。農地を宅地に転用するなどの開発を求めているのではなく、集落の中に既にあり、道路や下水道などのインフラも整っている宅地を有効に活用すべきではないかと主張しているのである。荒れ地に変わっていくさまをこのまま見ているわけにはいかない。農地の維持に必要な居住人口を確保し、既存集落を維持していくためには、定住化促進の取り組みは待ったなしの状況である。最後に、このまま人口減少が進み、集落が荒廃して手おくれにならないよう、集落内の既存宅地を有効利用する手だてを真剣に検討する必要があると考えるが所見を尋ねる。また、市街化調整区域を何とか活性化させたいという思いを市長は常に語っており、希望が持てることだと考えているため、特段の配慮を求めて質問を終える。 △住宅都市局長 市街化調整区域は原則として市街化を抑制し、自然環境の保全に配慮する区域であるが、人口減少や高齢化が進行し、農林水産業やコミュニティの維持などについてさまざまな課題が顕在化していることは十分認識しているため、既存集落において、区域指定型の制度についてより一層の周知や丁寧な説明に努め、その活用を着実に促進していくとともに、地域の課題やニーズの把握に努め、地域の実情に応じた定住化の促進に向けた取り組みについて調査研究していく。 |
皆様のご意見、ご質問、ご感想、ご主張、ご要望をお気軽にお寄せください。 ページの先頭へ戻る