藤本 議員の質疑と答弁

◯藤本委員 28年度決算に関し、その事業評価と今後の取り組みについて、市民病院とこども病院について、人生100年時代を見据えたシルバー人材センターの役割について、以上3点について質問する。まず、28年度の事業評価と今後の取り組みについて尋ねるに当たり、決算とはどのような役割なのか考えてみた。本市は他都市と比べてもスピーディーにいろいろな施策が進んでいる都市であり、7割を超える市民が市政に信頼を寄せているといった高い評価を受けている。しかし、だからこそ、一旦時間を止めて、自分たちの施策が市全体の施策の流れの中でおくれをとっていないか、市民の期待の先取りをしているか、また、施策を継続すべきか、施策を強化していくべきか、廃止した方がよいかなどの選択を観測すること、定点観測することが重要であり、それが決算の機会ではないかと思っている。個別の事業の細かい決算額などではなく、施策の執行に当たって、当局がどう自己評価しているか、率直に具体例を挙げて答弁いただければ大変ありがたい。言うまでもなく、本市は今、歴史的な大転換期を迎えていると言っても過言ではないと思う。少なくとも、まちづくりについて言えば、本市開闢以来、明治以降と終戦後、そして今回、第3期目の大改革の時期に来ていると思う。戦後復興し立ち直った福岡は、市民それぞれがそれぞれのバイタリティーでまちをつくってきたが、それを一定の目的に向かって整理し、リードしていくことが極めて重要な時期に入ってきていると思う。例えば、九大箱崎キャンパス跡地のまちづくり、天神再開発いわゆるビッグバン、大名小学校などの小中学校跡地の活用、青果市場の跡地開発、コンベンション機能を強化するウオーターフロントのまちづくり、福岡空港の大改造とその周辺のまちづくり、博多駅筑紫口の再整備と空港に至る沿線の活用など、専門家からは空港と博多駅間が余りにも、県都福岡の窓口としては寂しいという評価もあるが、このようなビッグプロジェクトを同時並行で進めており、東京以外には全国に例のないプロジェクトにあふれた都市だと思っている。本市職員は極めて優秀な人材がそろっているが、これだけのプロジェクトは、職員の手に余るのではないか、職員に過度の負担をかけているのではないかと、少し心配している。目の前のプロジェクトに全力を挙げて、目も心も奪われているが、果たしてそれが、最終的に本市の目的とする将来構想に向かっているかどうか、慎重に見きわめていかなければならないのではないかと思っている。職員の責任も大きいが、当然我々議会も同様の責任を市民から担っているわけであるから、緊張感を持ちながら力を合わせて励んでいかなければならないと思っている。そういった意味からも、本市職員として市民のために邁進するという役人冥利に尽きる時代に、市長を初め、市の目指す方向をきちんとリードしながら頑張っていただきたいと思っている。そこで、本市の財政健全化や市民の負担軽減、将来の市民の債務軽減という、全市共通の事業の進捗の中で、自分たちの役割がきちんと果たされているか、市全体のレベルに沿って、そのかじ取りができているのかについて、本市の主要施策の4つの分野である、見守り、支え合う、共創の地域づくりについて、次代を担う子ども、グローバル人材の育成について、福岡の成長を牽引する観光・MICE、都心部機能強化の推進について、人と企業を呼び込むスタートアップ都市づくりについて、定点観測として、関係局の評価を伺う。初めに、共創の地域づくりの推進について尋ねる。本市では16年度に自治協議会制度が創設されてから10年余りが経過し、28年度からは、新たに地域と行政だけではなく、企業やNPO、大学などさまざまな主体を巻き込みながら地域の未来をともにつくっていく共創の取り組みがスタートした。そこで、共創の初年度である28年度を振り返っての評価と今後の取り組みについて尋ねる。
△市民局長 28年度から自治協議会に対する補助金を自治協議会共創補助金として拡充するとともに、地域の実情に応じ、柔軟に活用できるよう見直しを実施している。これにより、地域の特色を生かした魅力づくりや、きずなづくりのための地域カフェなど、さまざまな取り組みが進められているところである。また、新たな担い手づくりに向け、ふくおか地域の絆応援団などの事業を実施しており、今後とも、地域と企業や商店街、大学など、さまざまな主体をつなぐ共創の取り組みを着実に推進していく。
◯藤本委員 市民の中には、自治協議会のあり方や公民館等についていろいろな意見があるが、共創という新しい理念のもと、人間は社会的動物であるという大原則を踏まえて、いかにこの混乱し、変化の激しい時代に市民が足元を見失わずに、しっかりと本市の大地に立っていくかという、その一番基本の部分に取り組もうとしているわけである。次に、保育ニーズへの対応について質問する。国は、ことし4月1日時点で、全国の待機児童数が2万6,081人となり、3年連続で増加したと発表した。保育所等の定員は前年比で10万人増加しているものの、女性の就業率向上の社会的ニーズの高まりにより、保育所の申し込み児童数が大幅に増加したことによるものである。このような状況のもと、今年度末までとされていた待機児童解消は困難として、ことし6月に、新たに子育て安心プランが打ち出され、32年度末の待機児童解消を達成するために必要な22万人分の保育の受け皿を整備することになった。また、今後5年間で女性の就業率80%の状況にも対応できるよう、32万人分の保育の受け皿を拡大する計画となっていたが、先日、5年間で予定していた32万人分の保育の受け皿整備を、2年前倒しして、32年度末までに進めると、6月に発表されたばかりである。ふえ続ける保育ニーズへの対応は一刻の猶予もない状況にあるように思う。保育所等への申し込みについては、本市においても同様の状況であり、人口増加や女性の就業率上昇により入所申し込みは年々増加しており、本市はこの6年間で1万人を超える保育所の定員を確保しているにもかかわらず、待機児童解消には至っていない状況である。そこで、28年度の待機児童解消の成果と今後の取り組みについて尋ねる。
△こども未来局長 本市では、昨今の社会経済情勢の変化や働く女性の増加などに伴い、保育所への入所申し込み率や申し込み数は年々増加しており、この6年間で1万人を超える保育所等の整備をしてきたところである。28年度についても、新設公募において対象地域を限定するなど、必要なエリアへの整備を誘引しながら、既存施設の増改築、認定こども園や小規模保育事業の認可など、多様な手法により1,838人分の定員を確保したところである。特に、土地の確保が難しい都心部においては、中央区における園庭要件の緩和や、博多駅周辺での国家戦略特区制度による都市公園の活用など、工夫を凝らして保育所等の整備を進めてきた。さらに、国の施策とも連動し、企業主導型保育事業のPRや事業化の支援にも取り組んできた。今後とも、働く女性の増加などにより、増加が見込まれる保育ニーズに的確に対応するため、多様な手法を活用して保育所等の整備を推進していく。
◯藤本委員 国は、認定こども園の活用など、子どもについては全力を挙げて動き始めており、ぜひ本市も引き続き頑張っていただきたいと思う。次に、子どもの貧困対策について尋ねる。本年6月に2015年度時点での貧困率が発表され、13.9%と3年前の調査に比べて2.4ポイント低下している。貧困というとどうしても衣食住に事欠くような絶対的貧困をイメージするが、経済協力開発機構、いわゆるOECD加盟の先進国で共有しているのは、資本主義経済社会においては、ある意味での差別、格差は経済が飛躍していくためのエネルギーになるという相対的貧困という考え方である。平成22年の段階で、日本の子どもの相対的貧困率はOECD加盟34カ国中10番目となっている。この相対的貧困というのは、絶対的貧困と概念が異なるため、きちんと食べられていても、服を着られていても、寝る布団があっても、周りと比べて落ち込みがあれば貧困となるわけである。なぜ、このような概念を使うのかというと、それが経済発展にかかわるからである。年収1,000万円の人もいれば、500万円の人もいるが、これが自由競争社会を前提とする資本主義のあり方であり、その格差は追いつき追い越そうという社会にダイナミズムを与え、経済成長の根源となるもので、あってもいい格差と表現されているのである。我が国では、昨今、年収200万円レベルの所得の、いわゆる低所得世帯の増加に注目が集まっている。生きていくためにぎりぎりの生活に追われる家庭に生まれた子どもはその環境からなかなか抜け出せない。また、やる気や意欲を失い、それがあきらめや絶望につながり、不安と自己防衛から向学心や向上心などチャレンジする意欲を失うといった子どもたちへの関心が高まっている。そういった子どもたちの現象が、社会のダイナミズムを損ない、経済成長の阻害になるという考え方が、欧米の子どもの貧困率の基本になっており、我が国でも同様の状況にあるのではないかと捉えられ始めている。どのような境遇でも、あきらめたり絶望したりしない心を育てることが大事であるが、どうすればできるのか、教育が重要なことは間違いないが、欧米の膨大な実証研究によると、学校教育での効果は極めて限られているという結果が出ている。これは、子どもたちが学校教育よりも、家で親たちがどのような生活をしているかに大きく影響を受けるからだと言われている。そうであれば、大事なのは家庭教育ということになり、生まれてくる家庭を選べない子どもたちにとって、親次第というのは、運次第ということになるが、運がいいか悪いかで終わらせないのが人類の知恵であり、政治家の役割だと思っている。当初、子どもの貧困という問題に十分な認識を持っておらず、こども食堂などの話題になかなかついていけなかった。しかし、イギリスがEUにおける閉塞感から抜け出すために、イギリスの未来を子どもたちにかけようと、ブレア政権が10年間にわたってチルドレン・ファーストを唱え、この20年間で子どもの貧困率を10ポイント改善してきている。現金給付と子どもへの包括的ケアの仕組みを整え、努めてきたことが力になっていると聞いている。子どもの教育に力を入れる政策を政府の中枢に導入したことを知り、子どもの貧困率の改善に向けた家族政策を最重要視する施策についての記事に触れて、子どもの貧困という問題は国家レベルの施策として取り組まれるべき課題ということを痛感し、この問題の重要性を改めて感じた。共創の地域づくりは、我が国の地域社会の将来を担う子どもたちへの家族を超えた包括的ケアの仕組みの完成を目指す、子どもの地域包括ケアの核となる、高齢者の包括ケアとともに、まさに今の時代のテーマとして生きてくるのではないかと思っている。住民自治における自治協議会のあり方等に対しては、市民の不満や批判がある中で、行政が行うべき子どもの貧困問題の解決に、共創社会という地域の力を生かして、行政と地域がともに子どもを見守り、支え合うといった取り組みが子どもに対する地域包括ケアの新しい地域活動につながっていくのではないかと思うし、そうなることを期待している。そこで、子どもの貧困対策についての28年度の事業評価と今後の取り組みについて尋ねる。
△こども未来局長 子どもたちの将来が、その生まれ育った環境によって左右されることがないように、貧困の状況にある子どもが健やかに育成される環境を整備するとともに、教育の機会均等を図っていくことが重要であると考えている。そのため、これまで教育の支援、生活の支援、保護者に対する就労の支援、経済的支援など、さまざまな方面から総合的に子どもの貧困対策に関する施策を推進してきた。28年度についても、ひとり親に対する高等職業訓練促進資金の貸し付けや、こどもの食と居場所づくり支援事業、スクールソーシャルコーディネーターの配置などに取り組み、さらなる充実を図ったところである。今後とも、貧困が世代を超えて連鎖することがないよう、引き続き、関係部局との連携を図りながら、子どもの貧困対策をしっかりと推進していく。
◯藤本委員 子どもの貧困問題は、世界各国それぞれの取り組みがあるが、国家にとって非常に基本的な共通課題になっているということを理解し、一段と頑張ってほしいと思う。次に、観光・MICEの推進について質問する。昭和60年、コンベンションビューローの設立を提案する中で、コンベンションは本市の都市経営の大きな柱となると訴えてきたし、まさに本市の都市経営の大黒柱に育ってきている。本市の役割は、九州の中心都市として人が集まる仕掛けをつくり、集まった内外の観光客を九州中に回遊させていくことである。九州各県は、それぞれの持つ魅力に磨きをかけて、九州のすばらしい自然や観光資源を、一体となって九州の内外にアピールしていくという九州各県の競争的共存、競争しながらともに高めて、ともに豊かになって、この九州の繁栄を謳歌していく、九州の島民がそれを享受することができる、そういったことこそが九州全体の発展につながるものと思っている。また、コンベンションの開催に当たっては、会場となる会議室や展示場などが必要となるが、ウオーターフロント地区では第2期展示場の計画が進められるなど、今後さらなるMICE誘致が期待されている。近年の本市への入り込み観光客数の推移を見ると、毎年大きな伸びを示しており、平成27年は1,974万人と4年連続過去最高を更新した。平成28年はついに2,000万人を突破しているのではないだろうか。そのような中、2013年には福岡観光・集客戦略を策定し、さまざまな事業を進めている観光・MICEの推進について、過去3年の実績、評価や課題と今後の方針について尋ねる。
△経済観光文化局長 主な実績について、福岡空港、博多港からの外国人入国者数は、平成26年が120万人、平成27年が208万人、平成28年が257万人、クルーズ船の寄港回数は、平成26年が115回、平成27年が259回、平成28年が328回、国際会議の開催件数は、平成25年が253件、平成26年が336件、平成27年には363件となるなど、いずれも大幅に増加しており、こうした状況は、これまで観光・MICEの振興に全市を挙げて取り組んできた成果であると考えている。
 一方で、課題としては、こうした需要の増加に対して、コンベンション施設のお断りが生じていることや、市内宿泊施設の予約がとりにくい状況など、都市の供給力が不足していること、また、外国におけるMICE都市としての知名度の向上を図ることである。したがって、第2期展示場の整備やホテルの誘致などを着実に進めるなど、供給力の向上に取り組むとともに、2019年のラグビーワールドカップ、2020年の東京オリンピック・パラリンピック、2021年の世界水泳選手権など、大型スポーツMICEの開催を捉えて、知名度向上に向けた魅力の発信に取り組んでいく。今後とも、九州全体を牽引していけるよう、各都市などとの連携を図りながら、観光・MICE施策をしっかりと進めていく。
◯藤本委員 天神ビッグバンの推進について質問する。天神ビックバンは、航空法高さ制限の緩和などいろいろな形で大変大きな成果が出つつあるが、28年度の事業評価と今後の展望について尋ねる。
△住宅都市局長 多くの建物が更新時期を迎える天神地区において、国家戦略特区による航空法高さ制限の特例承認を得たことを契機に、本市独自の容積率の緩和制度などとあわせ、10年間で30棟の民間ビルの建てかえを誘導し、約2,900億円の建設投資効果と、毎年約8,500億円の経済波及効果を生み出す新たな空間と雇用を創出するプロジェクトとして、平成27年2月から始動している。28年度については、天神ビッグバンの東のゲートとなる水上公園が、にぎわいと憩いの拠点として7月にリニューアルオープンし、平成29年1月には、建てかえ第1号となるデザイン性や耐震性にすぐれた天神ビジネスセンタープロジェクトが本格始動している。また、西のゲートとなる旧大名小学校跡地では、導入機能や事業手法などを取りまとめた跡地活用プランを平成29年3月に策定し、今月中に事業者公募の開始を予定している。特に、航空法の高さ制限については、平成26年11月に天神明治通り地区約17ヘクタールが約67メートルから76メートルに緩和され、平成29年7月には旧大名小学校跡地約1.3ヘクタールが約76メートルから115メートルに、また9月には、天神明治通り地区において最大約115メートルまでのさらなる緩和が認められたことから、天神ビッグバンの動きは大きく加速していくものと考えている。福岡の都心部は、空港が近接しており利便性が高い一方で、航空法による高さ制限が長年土地開発の制約となっていたが、これが緩和されたことで、設計の自由度が上がり低層部のゆとりある空間や魅力あるまちなみの形成などが可能となり、まちの姿は大きく変わっていくものと考えている。
 今後は、これらの制度を最大限活用し、民間活力を生かしながら、耐震性にすぐれた先進的なビルへの建てかえを促進し、安全、安心で未来に誇れる魅力的で質の高いまちづくりに取り組んでいく。
◯藤本委員 航空法高さ制限の緩和については高く評価する。ただ、いろいろな場面で、今後、まだ規制緩和があるのではないかと聞かれるため、詳しくは知らないが今後はないのではないかと伝えている。実際、なかなか事業に取りかかろうとしない動きがあるので、どこかの時点で、今後規制緩和はないと伝えるべきであると思う。九州財務局が熊本になったとき、財務省をやめた方と一緒に、シンガポール、香港、東京に次ぐアジアの金融センターを天神につくろうという構想でかなり頑張った時期があった。今や、世界の主要ビル、世界的レベルの企業が入るテナントは、ワンフロア3,000平米と言われているが、世界的な企業が立地できるビルが近々出現してくるということは、福岡の経済にとって非常に待望久しいものであるため、しっかり頑張ってほしいと思う。このような天神ビッグバンを初め、歴史上特筆すべき大プロジェクトが続いているが、都市計画というのは非常に難しく、言葉は悪いが、本市は都市計画音痴だということをかねがね言っている。例えば博多駅筑紫口の第1回目の区画整理は、中期的視点で見ても、短冊のような道路ばかりで、既にあの混雑状況であり、閉塞感がある。あの地区に九州の行政センターがあるということが、どう考えても不可思議でならない。都市計画は中長期のしっかりした計画で進めていただきたいと思う。そのためにも、港や空港など、世界中のいろいろなまちづくりについて、百聞は一見にしかずという言葉にもあるように、国内外の事例を実際見て、研究したいという意欲のある職員には、ぜひ機会を与えてほしいと思う。その結果、財政の効率的な運営が図られ、コンサル任せではない、自分たちでつくった福岡のまちというものができ上がっていくのだと思う。次に、スタートアップ都市づくりの推進について尋ねる。本市のスタートアップ支援の取り組みについては、平成24年9月のスタートアップ都市宣言に始まり、その後、マスタープランへの明記やスタートアップ都市推進協議会の設立を経て、平成26年5月にグローバル創業・雇用創出特区に指定されるなど、矢継ぎ早に施策を実行して、スタートアップのムーブメントをつくり出している。また、海外との連携も積極的に進めてきた結果、日本で一番元気なスタートアップ都市と言われるほどになっている。その象徴的な役割を担ってきたのがスタートアップカフェである。その開設により、本市の創業に関する裾野はますます広がり、本市民が新たな事業にチャレンジしやすい環境ができたことは、非常に好ましいことである。そこで、スタートアップカフェ開設からの実績や最近の動きについて尋ねる。
△経済観光文化局長 スタートアップカフェの実績については、平成26年10月のオープンから今月9月末まで、相談件数は5,172件、イベント開催数は1,083回、イベント参加者は延べ約2万4,000人、起業した件数は127件となっている。ことしの4月に旧大名小学校に開設したスタートアップ支援施設フクオカグロースネクストに移転したことで、拠点や支援の効率が飛躍的に高まり、これらの好調な実績につながっていると考えている。また、最近では、人生100年時代の到来を見据え、持続可能な社会を目指す福岡100プロジェクトと連動したシニア向けの起業相談会を開催している。このように、世代を問わず、創業の裾野の拡大に幅広く対応するとともに、新しい事業にチャレンジしやすい環境整備に努めており、本市は、アジアでも有数のスタートアップ都市として国内外のメディアなどから高い評価を受けている。
◯藤本委員 スタートアップカフェは、お年寄りから若者まで、日本人に限らず外国人も、さまざまな人が訪問している。日本は銀行などの管理が非常に厳しいため、一度事業に失敗すると、生涯その失敗がつきまとってしまうが、実は、事業というのは何度失敗してもやり遂げるような人間でないとできないのである。そのような人が再起できるような都市であることについても、研究してほしいと思っている。これまで、本市の主要事業について、各局の自己評価と成果を尋ねてきた。ほんの一部分であったが、大変な変化の中でしっかり問題を整理しているということを痛感した。ぜひ頑張ってほしいと思う。この質問の締めくくりとして、財政局長に尋ねる。局長は、国との貴重な交流人事において本市の財政部長を歴任し、現職にいるため、言わば地元としがらみのない立場であるから、率直な意見や助言を伺えるのではないかと思う。最後に、本市の財政運営上の課題や留意すべき点などについて、客観的な立場で、総合的な評価やアドバイスを尋ね、この質問を終わる。
△財政局長 本市においては、25年度から28年度までの4年間を計画期間とする行財政改革プランに基づき、歳入の積極的な確保や行政運営の効率化等を進め、元気なまち、住みやすいまちと評価される本市の魅力や活力を維持し、将来にわたり発展させていくために必要な財源を確保するとともに、将来世代に過度な負担を残さないよう、市債残高を着実に縮減させてきたところである。その結果、普通会計の市債残高については、行財政改革プラン策定前の24年度から、各指定都市の決算が確定している27年度まで、毎年度、一貫して縮減させてきたところであり、このような指定都市は本市を含め6都市となっている。次に、地方公共団体の財政の健全化に関する法律等に基づき設けられている全国統一の健全化判断比率の主要指標である実質公債費比率と将来負担比率について分析すると、本市の実質公債費比率については、24年度の14.6%から27年度12.4%に2.2ポイント改善しており、また、本市の将来負担比率については、24年度の191.9%から27年度162.4%に29.5ポイント改善している。これら2つの指標については、いずれも早期健全化基準を下回っており、指定都市における位置づけも改善しているところである。なお、本市のこれらの2つの指標については、指定都市の中でなお高いほうの水準にあるが、その一方で、市民生活を支える社会資本が整備され、多くの資産が形成された側面もあると認識している。歳入の根幹である市税収入については、行財政改革プランに基づき、市税収入率の向上などに取り組んできたところであり、28年度決算見込みベースで本市の市税収入率は過去最高を更新し、市税収入額は4年連続で過去最高額を更新している。このように、近年、主要財政指標が毎年度改善してきているところであるが、今後の財政見通しについては、社会保障関係費が引き続き増加するなど、本市の財政は依然として楽観できる状況にないことから、将来にわたり持続可能な財政運営を目指した取り組みを進めていく必要がある。そこで、平成29年6月に財政運営プランを策定したところであり、市民生活に必要な行政サービスを安定的に提供しつつ、重要施策の推進や新たな課題に対応するために必要な財源を確保できるよう、政策推進プランに基づき、投資の選択と集中を図るとともに、歳入の積極的な確保や行政運営の効率化、既存事業の組みかえなどの不断の改善に取り組んでいく。また、中長期的な、生活の質の向上と都市の成長のために必要な施策事業の推進により、税源の涵養を図りつつ、超高齢社会に対応する持続可能な仕組みづくりやアセットマネジメントの推進、市債残高の縮減に向けた市債発行の抑制などにより、将来にわたり持続可能な財政運営に取り組んでいく。
◯藤本委員 大変示唆に富んだ答弁であったと思う。次に、福岡市立こども病院と福岡市民病院について尋ねる。両病院は平成22年4月、地方独立行政法人福岡市立病院機構の設立により、市から病院事業を継承する形で独立法人化された。まず初めに、アイランドシティへの移転、開院から約3年を経過したこども病院、救急診療棟の増築から3年を経過した市民病院の実績を踏まえて、26年度から28年度までの市立病院機構の当期純利益は幾らだったのか尋ねる。
△保健福祉局長 26年度が約987万円、27年度が約6,219万円、28年度が約2億6,476万円である。
◯藤本委員 小児の高度専門医療機関として、一般の病院とは異なるこども病院の果たすべき使命や役割と、移転後に新設した診療科など、充実が図られた機能にはどのようなものがあるのか尋ねる。
△保健福祉局長 こども病院の果たす使命や役割については、中核的な小児総合医療施設として、高度小児専門医療、小児救急医療及び周産期医療を提供するとともに、地域医療支援病院として、地域のかかりつけ医からの紹介で、比較的症状の重い患者の受け入れを行うなど、地域医療への貢献にも取り組んでいる。移転後の病床数については、それまでの190床に43床を加えた233床で開院し、現在は239床となっている。診療科については、脳神経外科、皮膚科、アレルギー・呼吸器科、小児歯科を新設するほか、循環器センター、周産期センター、川崎病センターなど、職種や部門に捉われない組織横断的なチーム医療を提供できる体制づくりを進め、さらなる医療機能の強化に努めている。さらに、ヘリコプターによる緊急搬送を可能にするヘリポートの設置や、患児家族滞在施設ふくおかハウスの建設、患者用駐車場の大幅な拡大など、施設面での充実を図っている。
◯藤本委員 川崎病については、こども病院では患者数が全国一であり、大変順調に成果を上げていると聞いている。そこで、全国にはこども病院と同様の役割を果たす小児専門の医療機関はどの程度あるのか尋ねる。
△保健福祉局長 こども病院のような小児総合医療施設については、こども病院のほかに全国に13カ所あり、その運営については、都道府県立や国立となっており、市立は全国的に本市だけとなっている。
◯藤本委員 実際に受診されている外来、入院患者の地区別割合はどのようになっているのか尋ねる。
△保健福祉局長 28年度の外来患者の割合については、市内が53.6%、市内を除く県内が32.8%であり、県外は九州が9.3%、中国、四国が1.1%、それ以外が3.1%となっている。また、入院患者の割合については、市内が42.8%、市内を除く県内が29.8%であり、県外は九州が21.3%、中国、四国が3.2%、それ以外が2.8%となっている。なお、外来、入院ともに、遠くは北海道からの受け入れがあっている。
◯藤本委員 アイランドシティへの移転後、空白が生じると心配されていた西部地区における小児2次医療体制はどのようになったのか尋ねる。
△保健福祉局長 こども病院移転後の西部地区の小児2次医療については、市医師会長が委員長を務め、小児科を有する総合病院の病院長や福岡地区小児科医会会長などで構成する福岡市西部地区における小児2次医療連絡協議会を平成28年6月に開催し、総括を行っていただいている。総括としては、こども病院移転後の西部地域における小児2次医療については、医療資源は充足しており、特に問題は発生していないとのことである。
◯藤本委員 新病院開院に合わせて整備されたふくおかハウスは、多くの個人や法人、団体などから支援を受けて開所されたと聞いている。そこで、その稼働状況について、また、利用料は幾らなのか尋ねる。
△保健福祉局長 ふくおかハウスは、入院している子どもの家族のための滞在施設であり、公益財団法人ドナルド・マクドナルド・ハウス・チャリティーズ・ジャパンが運営し、地域のボランティアの方々にハウスの運営を支えていただいている。運営費については、個人や企業からの寄附等によって賄われており、同様の施設は全国に11カ所ある。平成27年5月1日の開所後の27年度の平均稼働率は76.0%、28年度は81.2%となっており、利用が伸びてきている。なお、利用料金については、宿泊者1名につき1日当たり1,000円である。
◯藤本委員 こども病院は順調に成長しているようである。駐車場は既に満杯であったし、子どもたちの声が響いて、広く明るい病院の施設とともに、すばらしいスタートを切ったと思っている。ぜひ名実ともに日本一の病院を目指していただきたいと思う。次に、市民病院について尋ねる。
 市民病院は、都市部における高度救急医療、高度専門医療を行う医療機関として、200床強という全国でも小規模な病院であるが、効率的な経営を実現していると聞いている。救急診療棟が増築されて3年間が経過した。これまでの実績や期待される役割について尋ねる。
△保健福祉局長 市民病院の救急診療棟については、救急医療体制、感染症医療体制及び災害対策の強化のために増築され、平成26年9月1日から供用を開始した。これにより、救急搬送の受け入れ件数は、25年度の2,472件から、28年度は2,670件に増加している。また、増築に当たり、災害発生時などに対応できるよう、50床程度収容できる多目的ホールや簡易ベッドを備え、簡易ベッドは熊本地震の際に救援物資として貸し出しが行われている。平成26年10月20日に第二種感染症指定医療機関の指定を受け、救急診療棟に第二種感染症病床を4床設置した。第二種感染症病床については、平成28年11月に中東呼吸器症候群、いわゆるMERSの疑いのある患者の受け入れを行っている。なお、市民病院については、平成25年4月に九州・沖縄全8県を代表する8つの自治体病院との間で、また、熊本地震を受け、平成28年11月には、福岡県内の20の自治体病院との間で、災害時における医療機関相互応援に関する協定を締結しており、地震等の大規模災害発生時において被災病院に対して迅速かつ的確に支援できる体制を確立している。
◯藤本委員 市民病院は200床クラスの小規模の自治体病院であるが、その経営改善が非常に高く評価され、28年度に全国表彰を受けたと伺っており、県内のみならず九州の公立病院にいろいろな影響を及ぼし、手本になっているということも常々聞いているが、この表彰等について尋ねる。また、総務省からも評価されたと伺っているが、これらはどのような点が評価されたのか。
△保健福祉局長 28年度の自治体立優良病院表彰を受賞している。評価の主なポイントとしては、市民病院では医療法で定められた医療計画における、がん、脳卒中、急性心筋梗塞及び糖尿病の4疾病への対応を中心に、難易度、専門性の高い手術等を行っており、これらの救急医療、高度医療等が地域医療の確保に重要な役割を果たしてきたこと、並びに、過去5年間、経営努力の成果が見られ、経営の健全性が確保されていることなどが挙げられている。また、総務省による評価としては、全国884カ所の公立病院の中から、経営形態の見直しにより経営改善と医療提供体制の確保の両立に成果を上げた病院の一つとして、平成28年3月に公立病院経営改革事例集に取り上げられたものである。これにより、独法化後の市民病院の取り組みが、公立病院が経営改善に取り組む上での模範として全国的に紹介されたところである。
◯藤本委員 すばらしい成果であると思う。市民にも知ってもらい、市民が誇りを持つよう努力してほしい。そのことが病院のやる気にもつながっていくと思う。そこで、この質問の最後に、荒瀬副市長に、市は独法化をするに当たって、どのような成果を期待し、その成果をどのように評価しているのか尋ねる。
△副市長 本市においては、市が担うべき医療を安定的、継続的かつ効率的に提供していくため、平成22年4月に地方独立行政法人福岡市立病院機構を設立したところである。独法化に伴う効果としては、迅速な意思決定が可能となることで、医師、看護師等の増員など、医療環境の変化や多様化する医療ニーズへの機動的かつ柔軟的な対応が図られること、また、効率的な病院経営が図られることなどを期待したものである。独法化以来、両病院においては、公立病院として求められる高度医療、救急医療等の充実・強化が図られ、また、病院間との連携や病診連携が進むなど、地域医療への貢献もできているところである。また、法人全体として順調に経営改善が図られており、外部委員で構成される病院機構評価委員会においても、市が示す中期目標を十分に達成しているとの評価をいただいているところである。今後とも、独法化のメリットを生かしながら、質の高い医療の提供や患者サービスの向上を図り、市民の皆様に信頼される病院づくりに取り組んでいく。
◯藤本委員 病院機構の皆さんには、現場の頑張りにより表彰等されていることについて、多くの市民に知ってもらうべきであり、もっと発表してほしいとお願いしてきた。本当にすばらしい成果を重ねつつある。いろいろな問題も抱えているが、ぜひ先進的な市立病院として頑張ってほしいと思う。最後に、シルバー人材センターについて尋ねる。本市のシルバー人材センターは、昭和58年に設立され、平成24年より公益社団法人の認定を受けたところである。我々議会も一貫した支援を行ってきているが、まず、28年度の福岡市シルバー人材センターの財務状況及び補助金の決算額について伺う。
△保健福祉局長 28年度決算における経常収益は22億5,200万円余、経常費用は22億6,200万円余であり、正味財産期末残高は2億4,400万円余である。また、補助金収入については、市補助金が7,400万円余、国補助金が4,000万円余、合計1億1,400万円余である。
◯藤本委員 28年度のシルバー人材センターの1カ月当たりの平均就業率及び配分金について尋ねる。
△保健福祉局長 28年度の1カ月当たりの平均就業者数は3,759人であり、会員数の54.7%である。また、1カ月当たり平均配分金は3万7,772円である。
◯藤本委員 28年度のシルバー人材センターの事業の契約額と主な業務について尋ねる。
△保健福祉局長 28年度の契約額については、受託事業等が21億2,000万円余、労働者派遣契約が9,500万円余である。主な業務については、受託事業等では、自転車駐車場の管理、屋内清掃作業、除草、家事援助サービス等が多く、労働者派遣契約では、商品の品出し、事業所への送迎や、調理、保育の補助等が多くなっている。
◯藤本委員 全国各都市には意欲的に新しい取り組みに挑戦し、収益につながっている事業がたくさんあるので、福岡市シルバー人材センターにおいても、さらに取り組みを進めてほしい。また、職員の平均年齢が50歳ぐらいと聞いているので、若い職員を採用し、さまざまな仕事の開拓、開発をしてほしいと思う。そして現在の、高齢者の賃金は安くて当たり前という風潮ではなく、能力ある高齢者は若い者と変わらない、労働の質についても量についても十分な能力を持った人がたくさんいるので、その経験、能力を正当に評価し、行政に依存しない、独立した組織に一日も早く成長できるよう頑張っていただきたいと思う。そのような視点から、今後の取り組みを荒瀬副市長に尋ねて、この質問を終わる。
△副市長 少子高齢化が進む中、高齢者が知識や経験を生かして就労し、社会の支え手として活躍していただく取り組みは、大変重要だと認識している。現在、高齢者の就労支援については、ハローワーク等の関係機関との連携を強化するとともに、就労先の確保や職域拡大、自立経営に向けた機能強化に努力しているシルバー人材センターへの支援を引き続き行っていく。また、今年度からは、新たにスタートアップカフェを活用したアクティブシニア起業セミナーを実施するなど、高齢者の創業、就業のきっかけづくりを行っているところである。人生100年時代を見据えて、福岡100プロジェクトをオール福岡で推進しており、高齢者のニーズとライフスタイルに合わせた就労を通じた生きがいづくりを支援することにより、高齢になっても健康で意欲を持ちながら地域社会で活躍できる生涯現役社会の実現に向け、しっかりと取り組んでいく。
◯藤本委員 医療というのは市民の一番ベースになる健康管理である。長寿社会の中で最も重要な役割であるので、工夫して全国のモデルとして一段と頑張っていただきたいと思う。こども病院については、進藤一馬元市長や九大総長で小児科医でもあった遠城寺宗徳先生の思いなどから実現したと聞いている。遠城寺先生は、フランスの社会思想家ジャン・ジャック・ルソーの著書エミールの中にある、子どもは小さな大人ではない、子どもは子ども本来の姿として捉えるべきであるという言葉をよく使われており、多くの小児科医は子どもは大人のミニチュアではないとも表現するが、進藤元市長は遠城寺先生の高邁な理念に感銘を受け、全国初の市立こども病院・感染症センター設立の英断を下されたのである。昨今は、このような高邁な理念や思想や哲学を踏まえて、市民、国民のために政策をしようということが非常に少なくなっているような気がする。このような深い感銘を与える言葉に基づく事業は永続するわけである。遠城寺先生がこの言葉を大事にされたということ、進藤元市長がこの精神に共鳴されたということに限りない本市民としての誇りを感じている。エミールから引用された遠城寺先生の話やこども病院の役割は、子どもの貧困問題と共通のテーマであり、同じ土壌の問題だろうと捉えている。最後に、今回の決算の質問の情報収集を行う中で、私は雷に打たれたような衝撃を受けた。それは市民病院の関係者から聞いた進藤一馬元市長にかかわるエピソードである。市長をやめた後の進藤元市長が、ある年の正月4日に大腿骨の重篤な病気で、専門家が見ても大変な病状を抱えた状況で来院されたそうである。なぜこんなに悪化するまで放っておいたのかと病院関係者が尋ねると、3日までは病院の皆さんは休みで迷惑をかけると思い、きょう参ったとおっしゃったそうである。その言葉を聞いて、病院関係者は顔を上げることができなかったということである。進藤元市長に限らず、私の知る先輩議員や行政の幹部職員の多くの方々が市民病院にお世話になってきた。自分たちがつくった自分たちの病院だという信頼が市民病院にこれほど厚く寄せられているという、決算にふさわしいエピソードを紹介して質問を終わる。
◯藤本委員 28年度決算に関し、その事業評価と今後の取り組みについて、市民病院とこども病院について、人生100年時代を見据えたシルバー人材センターの役割について、以上3点について質問する。まず、28年度の事業評価と今後の取り組みについて尋ねるに当たり、決算とはどのような役割なのか考えてみた。本市は他都市と比べてもスピーディーにいろいろな施策が進んでいる都市であり、7割を超える市民が市政に信頼を寄せているといった高い評価を受けている。しかし、だからこそ、一旦時間を止めて、自分たちの施策が市全体の施策の流れの中でおくれをとっていないか、市民の期待の先取りをしているか、また、施策を継続すべきか、施策を強化していくべきか、廃止した方がよいかなどの選択を観測すること、定点観測することが重要であり、それが決算の機会ではないかと思っている。個別の事業の細かい決算額などではなく、施策の執行に当たって、当局がどう自己評価しているか、率直に具体例を挙げて答弁いただければ大変ありがたい。言うまでもなく、本市は今、歴史的な大転換期を迎えていると言っても過言ではないと思う。少なくとも、まちづくりについて言えば、本市開闢以来、明治以降と終戦後、そして今回、第3期目の大改革の時期に来ていると思う。戦後復興し立ち直った福岡は、市民それぞれがそれぞれのバイタリティーでまちをつくってきたが、それを一定の目的に向かって整理し、リードしていくことが極めて重要な時期に入ってきていると思う。例えば、九大箱崎キャンパス跡地のまちづくり、天神再開発いわゆるビッグバン、大名小学校などの小中学校跡地の活用、青果市場の跡地開発、コンベンション機能を強化するウオーターフロントのまちづくり、福岡空港の大改造とその周辺のまちづくり、博多駅筑紫口の再整備と空港に至る沿線の活用など、専門家からは空港と博多駅間が余りにも、県都福岡の窓口としては寂しいという評価もあるが、このようなビッグプロジェクトを同時並行で進めており、東京以外には全国に例のないプロジェクトにあふれた都市だと思っている。本市職員は極めて優秀な人材がそろっているが、これだけのプロジェクトは、職員の手に余るのではないか、職員に過度の負担をかけているのではないかと、少し心配している。目の前のプロジェクトに全力を挙げて、目も心も奪われているが、果たしてそれが、最終的に本市の目的とする将来構想に向かっているかどうか、慎重に見きわめていかなければならないのではないかと思っている。職員の責任も大きいが、当然我々議会も同様の責任を市民から担っているわけであるから、緊張感を持ちながら力を合わせて励んでいかなければならないと思っている。そういった意味からも、本市職員として市民のために邁進するという役人冥利に尽きる時代に、市長を初め、市の目指す方向をきちんとリードしながら頑張っていただきたいと思っている。そこで、本市の財政健全化や市民の負担軽減、将来の市民の債務軽減という、全市共通の事業の進捗の中で、自分たちの役割がきちんと果たされているか、市全体のレベルに沿って、そのかじ取りができているのかについて、本市の主要施策の4つの分野である、見守り、支え合う、共創の地域づくりについて、次代を担う子ども、グローバル人材の育成について、福岡の成長を牽引する観光・MICE、都心部機能強化の推進について、人と企業を呼び込むスタートアップ都市づくりについて、定点観測として、関係局の評価を伺う。初めに、共創の地域づくりの推進について尋ねる。本市では16年度に自治協議会制度が創設されてから10年余りが経過し、28年度からは、新たに地域と行政だけではなく、企業やNPO、大学などさまざまな主体を巻き込みながら地域の未来をともにつくっていく共創の取り組みがスタートした。そこで、共創の初年度である28年度を振り返っての評価と今後の取り組みについて尋ねる。
△市民局長 28年度から自治協議会に対する補助金を自治協議会共創補助金として拡充するとともに、地域の実情に応じ、柔軟に活用できるよう見直しを実施している。これにより、地域の特色を生かした魅力づくりや、きずなづくりのための地域カフェなど、さまざまな取り組みが進められているところである。また、新たな担い手づくりに向け、ふくおか地域の絆応援団などの事業を実施しており、今後とも、地域と企業や商店街、大学など、さまざまな主体をつなぐ共創の取り組みを着実に推進していく。
◯藤本委員 市民の中には、自治協議会のあり方や公民館等についていろいろな意見があるが、共創という新しい理念のもと、人間は社会的動物であるという大原則を踏まえて、いかにこの混乱し、変化の激しい時代に市民が足元を見失わずに、しっかりと本市の大地に立っていくかという、その一番基本の部分に取り組もうとしているわけである。次に、保育ニーズへの対応について質問する。国は、ことし4月1日時点で、全国の待機児童数が2万6,081人となり、3年連続で増加したと発表した。保育所等の定員は前年比で10万人増加しているものの、女性の就業率向上の社会的ニーズの高まりにより、保育所の申し込み児童数が大幅に増加したことによるものである。このような状況のもと、今年度末までとされていた待機児童解消は困難として、ことし6月に、新たに子育て安心プランが打ち出され、32年度末の待機児童解消を達成するために必要な22万人分の保育の受け皿を整備することになった。また、今後5年間で女性の就業率80%の状況にも対応できるよう、32万人分の保育の受け皿を拡大する計画となっていたが、先日、5年間で予定していた32万人分の保育の受け皿整備を、2年前倒しして、32年度末までに進めると、6月に発表されたばかりである。ふえ続ける保育ニーズへの対応は一刻の猶予もない状況にあるように思う。保育所等への申し込みについては、本市においても同様の状況であり、人口増加や女性の就業率上昇により入所申し込みは年々増加しており、本市はこの6年間で1万人を超える保育所の定員を確保しているにもかかわらず、待機児童解消には至っていない状況である。そこで、28年度の待機児童解消の成果と今後の取り組みについて尋ねる。
△こども未来局長 本市では、昨今の社会経済情勢の変化や働く女性の増加などに伴い、保育所への入所申し込み率や申し込み数は年々増加しており、この6年間で1万人を超える保育所等の整備をしてきたところである。28年度についても、新設公募において対象地域を限定するなど、必要なエリアへの整備を誘引しながら、既存施設の増改築、認定こども園や小規模保育事業の認可など、多様な手法により1,838人分の定員を確保したところである。特に、土地の確保が難しい都心部においては、中央区における園庭要件の緩和や、博多駅周辺での国家戦略特区制度による都市公園の活用など、工夫を凝らして保育所等の整備を進めてきた。さらに、国の施策とも連動し、企業主導型保育事業のPRや事業化の支援にも取り組んできた。今後とも、働く女性の増加などにより、増加が見込まれる保育ニーズに的確に対応するため、多様な手法を活用して保育所等の整備を推進していく。
◯藤本委員 国は、認定こども園の活用など、子どもについては全力を挙げて動き始めており、ぜひ本市も引き続き頑張っていただきたいと思う。次に、子どもの貧困対策について尋ねる。本年6月に2015年度時点での貧困率が発表され、13.9%と3年前の調査に比べて2.4ポイント低下している。貧困というとどうしても衣食住に事欠くような絶対的貧困をイメージするが、経済協力開発機構、いわゆるOECD加盟の先進国で共有しているのは、資本主義経済社会においては、ある意味での差別、格差は経済が飛躍していくためのエネルギーになるという相対的貧困という考え方である。平成22年の段階で、日本の子どもの相対的貧困率はOECD加盟34カ国中10番目となっている。この相対的貧困というのは、絶対的貧困と概念が異なるため、きちんと食べられていても、服を着られていても、寝る布団があっても、周りと比べて落ち込みがあれば貧困となるわけである。なぜ、このような概念を使うのかというと、それが経済発展にかかわるからである。年収1,000万円の人もいれば、500万円の人もいるが、これが自由競争社会を前提とする資本主義のあり方であり、その格差は追いつき追い越そうという社会にダイナミズムを与え、経済成長の根源となるもので、あってもいい格差と表現されているのである。我が国では、昨今、年収200万円レベルの所得の、いわゆる低所得世帯の増加に注目が集まっている。生きていくためにぎりぎりの生活に追われる家庭に生まれた子どもはその環境からなかなか抜け出せない。また、やる気や意欲を失い、それがあきらめや絶望につながり、不安と自己防衛から向学心や向上心などチャレンジする意欲を失うといった子どもたちへの関心が高まっている。そういった子どもたちの現象が、社会のダイナミズムを損ない、経済成長の阻害になるという考え方が、欧米の子どもの貧困率の基本になっており、我が国でも同様の状況にあるのではないかと捉えられ始めている。どのような境遇でも、あきらめたり絶望したりしない心を育てることが大事であるが、どうすればできるのか、教育が重要なことは間違いないが、欧米の膨大な実証研究によると、学校教育での効果は極めて限られているという結果が出ている。これは、子どもたちが学校教育よりも、家で親たちがどのような生活をしているかに大きく影響を受けるからだと言われている。そうであれば、大事なのは家庭教育ということになり、生まれてくる家庭を選べない子どもたちにとって、親次第というのは、運次第ということになるが、運がいいか悪いかで終わらせないのが人類の知恵であり、政治家の役割だと思っている。当初、子どもの貧困という問題に十分な認識を持っておらず、こども食堂などの話題になかなかついていけなかった。しかし、イギリスがEUにおける閉塞感から抜け出すために、イギリスの未来を子どもたちにかけようと、ブレア政権が10年間にわたってチルドレン・ファーストを唱え、この20年間で子どもの貧困率を10ポイント改善してきている。現金給付と子どもへの包括的ケアの仕組みを整え、努めてきたことが力になっていると聞いている。子どもの教育に力を入れる政策を政府の中枢に導入したことを知り、子どもの貧困率の改善に向けた家族政策を最重要視する施策についての記事に触れて、子どもの貧困という問題は国家レベルの施策として取り組まれるべき課題ということを痛感し、この問題の重要性を改めて感じた。共創の地域づくりは、我が国の地域社会の将来を担う子どもたちへの家族を超えた包括的ケアの仕組みの完成を目指す、子どもの地域包括ケアの核となる、高齢者の包括ケアとともに、まさに今の時代のテーマとして生きてくるのではないかと思っている。住民自治における自治協議会のあり方等に対しては、市民の不満や批判がある中で、行政が行うべき子どもの貧困問題の解決に、共創社会という地域の力を生かして、行政と地域がともに子どもを見守り、支え合うといった取り組みが子どもに対する地域包括ケアの新しい地域活動につながっていくのではないかと思うし、そうなることを期待している。そこで、子どもの貧困対策についての28年度の事業評価と今後の取り組みについて尋ねる。
△こども未来局長 子どもたちの将来が、その生まれ育った環境によって左右されることがないように、貧困の状況にある子どもが健やかに育成される環境を整備するとともに、教育の機会均等を図っていくことが重要であると考えている。そのため、これまで教育の支援、生活の支援、保護者に対する就労の支援、経済的支援など、さまざまな方面から総合的に子どもの貧困対策に関する施策を推進してきた。28年度についても、ひとり親に対する高等職業訓練促進資金の貸し付けや、こどもの食と居場所づくり支援事業、スクールソーシャルコーディネーターの配置などに取り組み、さらなる充実を図ったところである。今後とも、貧困が世代を超えて連鎖することがないよう、引き続き、関係部局との連携を図りながら、子どもの貧困対策をしっかりと推進していく。
◯藤本委員 子どもの貧困問題は、世界各国それぞれの取り組みがあるが、国家にとって非常に基本的な共通課題になっているということを理解し、一段と頑張ってほしいと思う。次に、観光・MICEの推進について質問する。昭和60年、コンベンションビューローの設立を提案する中で、コンベンションは本市の都市経営の大きな柱となると訴えてきたし、まさに本市の都市経営の大黒柱に育ってきている。本市の役割は、九州の中心都市として人が集まる仕掛けをつくり、集まった内外の観光客を九州中に回遊させていくことである。九州各県は、それぞれの持つ魅力に磨きをかけて、九州のすばらしい自然や観光資源を、一体となって九州の内外にアピールしていくという九州各県の競争的共存、競争しながらともに高めて、ともに豊かになって、この九州の繁栄を謳歌していく、九州の島民がそれを享受することができる、そういったことこそが九州全体の発展につながるものと思っている。また、コンベンションの開催に当たっては、会場となる会議室や展示場などが必要となるが、ウオーターフロント地区では第2期展示場の計画が進められるなど、今後さらなるMICE誘致が期待されている。近年の本市への入り込み観光客数の推移を見ると、毎年大きな伸びを示しており、平成27年は1,974万人と4年連続過去最高を更新した。平成28年はついに2,000万人を突破しているのではないだろうか。そのような中、2013年には福岡観光・集客戦略を策定し、さまざまな事業を進めている観光・MICEの推進について、過去3年の実績、評価や課題と今後の方針について尋ねる。
△経済観光文化局長 主な実績について、福岡空港、博多港からの外国人入国者数は、平成26年が120万人、平成27年が208万人、平成28年が257万人、クルーズ船の寄港回数は、平成26年が115回、平成27年が259回、平成28年が328回、国際会議の開催件数は、平成25年が253件、平成26年が336件、平成27年には363件となるなど、いずれも大幅に増加しており、こうした状況は、これまで観光・MICEの振興に全市を挙げて取り組んできた成果であると考えている。
 一方で、課題としては、こうした需要の増加に対して、コンベンション施設のお断りが生じていることや、市内宿泊施設の予約がとりにくい状況など、都市の供給力が不足していること、また、外国におけるMICE都市としての知名度の向上を図ることである。したがって、第2期展示場の整備やホテルの誘致などを着実に進めるなど、供給力の向上に取り組むとともに、2019年のラグビーワールドカップ、2020年の東京オリンピック・パラリンピック、2021年の世界水泳選手権など、大型スポーツMICEの開催を捉えて、知名度向上に向けた魅力の発信に取り組んでいく。今後とも、九州全体を牽引していけるよう、各都市などとの連携を図りながら、観光・MICE施策をしっかりと進めていく。
◯藤本委員 天神ビッグバンの推進について質問する。天神ビックバンは、航空法高さ制限の緩和などいろいろな形で大変大きな成果が出つつあるが、28年度の事業評価と今後の展望について尋ねる。
△住宅都市局長 多くの建物が更新時期を迎える天神地区において、国家戦略特区による航空法高さ制限の特例承認を得たことを契機に、本市独自の容積率の緩和制度などとあわせ、10年間で30棟の民間ビルの建てかえを誘導し、約2,900億円の建設投資効果と、毎年約8,500億円の経済波及効果を生み出す新たな空間と雇用を創出するプロジェクトとして、平成27年2月から始動している。28年度については、天神ビッグバンの東のゲートとなる水上公園が、にぎわいと憩いの拠点として7月にリニューアルオープンし、平成29年1月には、建てかえ第1号となるデザイン性や耐震性にすぐれた天神ビジネスセンタープロジェクトが本格始動している。また、西のゲートとなる旧大名小学校跡地では、導入機能や事業手法などを取りまとめた跡地活用プランを平成29年3月に策定し、今月中に事業者公募の開始を予定している。特に、航空法の高さ制限については、平成26年11月に天神明治通り地区約17ヘクタールが約67メートルから76メートルに緩和され、平成29年7月には旧大名小学校跡地約1.3ヘクタールが約76メートルから115メートルに、また9月には、天神明治通り地区において最大約115メートルまでのさらなる緩和が認められたことから、天神ビッグバンの動きは大きく加速していくものと考えている。福岡の都心部は、空港が近接しており利便性が高い一方で、航空法による高さ制限が長年土地開発の制約となっていたが、これが緩和されたことで、設計の自由度が上がり低層部のゆとりある空間や魅力あるまちなみの形成などが可能となり、まちの姿は大きく変わっていくものと考えている。
 今後は、これらの制度を最大限活用し、民間活力を生かしながら、耐震性にすぐれた先進的なビルへの建てかえを促進し、安全、安心で未来に誇れる魅力的で質の高いまちづくりに取り組んでいく。
◯藤本委員 航空法高さ制限の緩和については高く評価する。ただ、いろいろな場面で、今後、まだ規制緩和があるのではないかと聞かれるため、詳しくは知らないが今後はないのではないかと伝えている。実際、なかなか事業に取りかかろうとしない動きがあるので、どこかの時点で、今後規制緩和はないと伝えるべきであると思う。九州財務局が熊本になったとき、財務省をやめた方と一緒に、シンガポール、香港、東京に次ぐアジアの金融センターを天神につくろうという構想でかなり頑張った時期があった。今や、世界の主要ビル、世界的レベルの企業が入るテナントは、ワンフロア3,000平米と言われているが、世界的な企業が立地できるビルが近々出現してくるということは、福岡の経済にとって非常に待望久しいものであるため、しっかり頑張ってほしいと思う。このような天神ビッグバンを初め、歴史上特筆すべき大プロジェクトが続いているが、都市計画というのは非常に難しく、言葉は悪いが、本市は都市計画音痴だということをかねがね言っている。例えば博多駅筑紫口の第1回目の区画整理は、中期的視点で見ても、短冊のような道路ばかりで、既にあの混雑状況であり、閉塞感がある。あの地区に九州の行政センターがあるということが、どう考えても不可思議でならない。都市計画は中長期のしっかりした計画で進めていただきたいと思う。そのためにも、港や空港など、世界中のいろいろなまちづくりについて、百聞は一見にしかずという言葉にもあるように、国内外の事例を実際見て、研究したいという意欲のある職員には、ぜひ機会を与えてほしいと思う。その結果、財政の効率的な運営が図られ、コンサル任せではない、自分たちでつくった福岡のまちというものができ上がっていくのだと思う。次に、スタートアップ都市づくりの推進について尋ねる。本市のスタートアップ支援の取り組みについては、平成24年9月のスタートアップ都市宣言に始まり、その後、マスタープランへの明記やスタートアップ都市推進協議会の設立を経て、平成26年5月にグローバル創業・雇用創出特区に指定されるなど、矢継ぎ早に施策を実行して、スタートアップのムーブメントをつくり出している。また、海外との連携も積極的に進めてきた結果、日本で一番元気なスタートアップ都市と言われるほどになっている。その象徴的な役割を担ってきたのがスタートアップカフェである。その開設により、本市の創業に関する裾野はますます広がり、本市民が新たな事業にチャレンジしやすい環境ができたことは、非常に好ましいことである。そこで、スタートアップカフェ開設からの実績や最近の動きについて尋ねる。
△経済観光文化局長 スタートアップカフェの実績については、平成26年10月のオープンから今月9月末まで、相談件数は5,172件、イベント開催数は1,083回、イベント参加者は延べ約2万4,000人、起業した件数は127件となっている。ことしの4月に旧大名小学校に開設したスタートアップ支援施設フクオカグロースネクストに移転したことで、拠点や支援の効率が飛躍的に高まり、これらの好調な実績につながっていると考えている。また、最近では、人生100年時代の到来を見据え、持続可能な社会を目指す福岡100プロジェクトと連動したシニア向けの起業相談会を開催している。このように、世代を問わず、創業の裾野の拡大に幅広く対応するとともに、新しい事業にチャレンジしやすい環境整備に努めており、本市は、アジアでも有数のスタートアップ都市として国内外のメディアなどから高い評価を受けている。
◯藤本委員 スタートアップカフェは、お年寄りから若者まで、日本人に限らず外国人も、さまざまな人が訪問している。日本は銀行などの管理が非常に厳しいため、一度事業に失敗すると、生涯その失敗がつきまとってしまうが、実は、事業というのは何度失敗してもやり遂げるような人間でないとできないのである。そのような人が再起できるような都市であることについても、研究してほしいと思っている。これまで、本市の主要事業について、各局の自己評価と成果を尋ねてきた。ほんの一部分であったが、大変な変化の中でしっかり問題を整理しているということを痛感した。ぜひ頑張ってほしいと思う。この質問の締めくくりとして、財政局長に尋ねる。局長は、国との貴重な交流人事において本市の財政部長を歴任し、現職にいるため、言わば地元としがらみのない立場であるから、率直な意見や助言を伺えるのではないかと思う。最後に、本市の財政運営上の課題や留意すべき点などについて、客観的な立場で、総合的な評価やアドバイスを尋ね、この質問を終わる。
△財政局長 本市においては、25年度から28年度までの4年間を計画期間とする行財政改革プランに基づき、歳入の積極的な確保や行政運営の効率化等を進め、元気なまち、住みやすいまちと評価される本市の魅力や活力を維持し、将来にわたり発展させていくために必要な財源を確保するとともに、将来世代に過度な負担を残さないよう、市債残高を着実に縮減させてきたところである。その結果、普通会計の市債残高については、行財政改革プラン策定前の24年度から、各指定都市の決算が確定している27年度まで、毎年度、一貫して縮減させてきたところであり、このような指定都市は本市を含め6都市となっている。次に、地方公共団体の財政の健全化に関する法律等に基づき設けられている全国統一の健全化判断比率の主要指標である実質公債費比率と将来負担比率について分析すると、本市の実質公債費比率については、24年度の14.6%から27年度12.4%に2.2ポイント改善しており、また、本市の将来負担比率については、24年度の191.9%から27年度162.4%に29.5ポイント改善している。これら2つの指標については、いずれも早期健全化基準を下回っており、指定都市における位置づけも改善しているところである。なお、本市のこれらの2つの指標については、指定都市の中でなお高いほうの水準にあるが、その一方で、市民生活を支える社会資本が整備され、多くの資産が形成された側面もあると認識している。歳入の根幹である市税収入については、行財政改革プランに基づき、市税収入率の向上などに取り組んできたところであり、28年度決算見込みベースで本市の市税収入率は過去最高を更新し、市税収入額は4年連続で過去最高額を更新している。このように、近年、主要財政指標が毎年度改善してきているところであるが、今後の財政見通しについては、社会保障関係費が引き続き増加するなど、本市の財政は依然として楽観できる状況にないことから、将来にわたり持続可能な財政運営を目指した取り組みを進めていく必要がある。そこで、平成29年6月に財政運営プランを策定したところであり、市民生活に必要な行政サービスを安定的に提供しつつ、重要施策の推進や新たな課題に対応するために必要な財源を確保できるよう、政策推進プランに基づき、投資の選択と集中を図るとともに、歳入の積極的な確保や行政運営の効率化、既存事業の組みかえなどの不断の改善に取り組んでいく。また、中長期的な、生活の質の向上と都市の成長のために必要な施策事業の推進により、税源の涵養を図りつつ、超高齢社会に対応する持続可能な仕組みづくりやアセットマネジメントの推進、市債残高の縮減に向けた市債発行の抑制などにより、将来にわたり持続可能な財政運営に取り組んでいく。
◯藤本委員 大変示唆に富んだ答弁であったと思う。次に、福岡市立こども病院と福岡市民病院について尋ねる。両病院は平成22年4月、地方独立行政法人福岡市立病院機構の設立により、市から病院事業を継承する形で独立法人化された。まず初めに、アイランドシティへの移転、開院から約3年を経過したこども病院、救急診療棟の増築から3年を経過した市民病院の実績を踏まえて、26年度から28年度までの市立病院機構の当期純利益は幾らだったのか尋ねる。
△保健福祉局長 26年度が約987万円、27年度が約6,219万円、28年度が約2億6,476万円である。
◯藤本委員 小児の高度専門医療機関として、一般の病院とは異なるこども病院の果たすべき使命や役割と、移転後に新設した診療科など、充実が図られた機能にはどのようなものがあるのか尋ねる。
△保健福祉局長 こども病院の果たす使命や役割については、中核的な小児総合医療施設として、高度小児専門医療、小児救急医療及び周産期医療を提供するとともに、地域医療支援病院として、地域のかかりつけ医からの紹介で、比較的症状の重い患者の受け入れを行うなど、地域医療への貢献にも取り組んでいる。移転後の病床数については、それまでの190床に43床を加えた233床で開院し、現在は239床となっている。診療科については、脳神経外科、皮膚科、アレルギー・呼吸器科、小児歯科を新設するほか、循環器センター、周産期センター、川崎病センターなど、職種や部門に捉われない組織横断的なチーム医療を提供できる体制づくりを進め、さらなる医療機能の強化に努めている。さらに、ヘリコプターによる緊急搬送を可能にするヘリポートの設置や、患児家族滞在施設ふくおかハウスの建設、患者用駐車場の大幅な拡大など、施設面での充実を図っている。
◯藤本委員 川崎病については、こども病院では患者数が全国一であり、大変順調に成果を上げていると聞いている。そこで、全国にはこども病院と同様の役割を果たす小児専門の医療機関はどの程度あるのか尋ねる。
△保健福祉局長 こども病院のような小児総合医療施設については、こども病院のほかに全国に13カ所あり、その運営については、都道府県立や国立となっており、市立は全国的に本市だけとなっている。
◯藤本委員 実際に受診されている外来、入院患者の地区別割合はどのようになっているのか尋ねる。
△保健福祉局長 28年度の外来患者の割合については、市内が53.6%、市内を除く県内が32.8%であり、県外は九州が9.3%、中国、四国が1.1%、それ以外が3.1%となっている。また、入院患者の割合については、市内が42.8%、市内を除く県内が29.8%であり、県外は九州が21.3%、中国、四国が3.2%、それ以外が2.8%となっている。なお、外来、入院ともに、遠くは北海道からの受け入れがあっている。
◯藤本委員 アイランドシティへの移転後、空白が生じると心配されていた西部地区における小児2次医療体制はどのようになったのか尋ねる。
△保健福祉局長 こども病院移転後の西部地区の小児2次医療については、市医師会長が委員長を務め、小児科を有する総合病院の病院長や福岡地区小児科医会会長などで構成する福岡市西部地区における小児2次医療連絡協議会を平成28年6月に開催し、総括を行っていただいている。総括としては、こども病院移転後の西部地域における小児2次医療については、医療資源は充足しており、特に問題は発生していないとのことである。
◯藤本委員 新病院開院に合わせて整備されたふくおかハウスは、多くの個人や法人、団体などから支援を受けて開所されたと聞いている。そこで、その稼働状況について、また、利用料は幾らなのか尋ねる。
△保健福祉局長 ふくおかハウスは、入院している子どもの家族のための滞在施設であり、公益財団法人ドナルド・マクドナルド・ハウス・チャリティーズ・ジャパンが運営し、地域のボランティアの方々にハウスの運営を支えていただいている。運営費については、個人や企業からの寄附等によって賄われており、同様の施設は全国に11カ所ある。平成27年5月1日の開所後の27年度の平均稼働率は76.0%、28年度は81.2%となっており、利用が伸びてきている。なお、利用料金については、宿泊者1名につき1日当たり1,000円である。
◯藤本委員 こども病院は順調に成長しているようである。駐車場は既に満杯であったし、子どもたちの声が響いて、広く明るい病院の施設とともに、すばらしいスタートを切ったと思っている。ぜひ名実ともに日本一の病院を目指していただきたいと思う。次に、市民病院について尋ねる。
 市民病院は、都市部における高度救急医療、高度専門医療を行う医療機関として、200床強という全国でも小規模な病院であるが、効率的な経営を実現していると聞いている。救急診療棟が増築されて3年間が経過した。これまでの実績や期待される役割について尋ねる。
△保健福祉局長 市民病院の救急診療棟については、救急医療体制、感染症医療体制及び災害対策の強化のために増築され、平成26年9月1日から供用を開始した。これにより、救急搬送の受け入れ件数は、25年度の2,472件から、28年度は2,670件に増加している。また、増築に当たり、災害発生時などに対応できるよう、50床程度収容できる多目的ホールや簡易ベッドを備え、簡易ベッドは熊本地震の際に救援物資として貸し出しが行われている。平成26年10月20日に第二種感染症指定医療機関の指定を受け、救急診療棟に第二種感染症病床を4床設置した。第二種感染症病床については、平成28年11月に中東呼吸器症候群、いわゆるMERSの疑いのある患者の受け入れを行っている。なお、市民病院については、平成25年4月に九州・沖縄全8県を代表する8つの自治体病院との間で、また、熊本地震を受け、平成28年11月には、福岡県内の20の自治体病院との間で、災害時における医療機関相互応援に関する協定を締結しており、地震等の大規模災害発生時において被災病院に対して迅速かつ的確に支援できる体制を確立している。
◯藤本委員 市民病院は200床クラスの小規模の自治体病院であるが、その経営改善が非常に高く評価され、28年度に全国表彰を受けたと伺っており、県内のみならず九州の公立病院にいろいろな影響を及ぼし、手本になっているということも常々聞いているが、この表彰等について尋ねる。また、総務省からも評価されたと伺っているが、これらはどのような点が評価されたのか。
△保健福祉局長 28年度の自治体立優良病院表彰を受賞している。評価の主なポイントとしては、市民病院では医療法で定められた医療計画における、がん、脳卒中、急性心筋梗塞及び糖尿病の4疾病への対応を中心に、難易度、専門性の高い手術等を行っており、これらの救急医療、高度医療等が地域医療の確保に重要な役割を果たしてきたこと、並びに、過去5年間、経営努力の成果が見られ、経営の健全性が確保されていることなどが挙げられている。また、総務省による評価としては、全国884カ所の公立病院の中から、経営形態の見直しにより経営改善と医療提供体制の確保の両立に成果を上げた病院の一つとして、平成28年3月に公立病院経営改革事例集に取り上げられたものである。これにより、独法化後の市民病院の取り組みが、公立病院が経営改善に取り組む上での模範として全国的に紹介されたところである。
◯藤本委員 すばらしい成果であると思う。市民にも知ってもらい、市民が誇りを持つよう努力してほしい。そのことが病院のやる気にもつながっていくと思う。そこで、この質問の最後に、荒瀬副市長に、市は独法化をするに当たって、どのような成果を期待し、その成果をどのように評価しているのか尋ねる。
△副市長 本市においては、市が担うべき医療を安定的、継続的かつ効率的に提供していくため、平成22年4月に地方独立行政法人福岡市立病院機構を設立したところである。独法化に伴う効果としては、迅速な意思決定が可能となることで、医師、看護師等の増員など、医療環境の変化や多様化する医療ニーズへの機動的かつ柔軟的な対応が図られること、また、効率的な病院経営が図られることなどを期待したものである。独法化以来、両病院においては、公立病院として求められる高度医療、救急医療等の充実・強化が図られ、また、病院間との連携や病診連携が進むなど、地域医療への貢献もできているところである。また、法人全体として順調に経営改善が図られており、外部委員で構成される病院機構評価委員会においても、市が示す中期目標を十分に達成しているとの評価をいただいているところである。今後とも、独法化のメリットを生かしながら、質の高い医療の提供や患者サービスの向上を図り、市民の皆様に信頼される病院づくりに取り組んでいく。
◯藤本委員 病院機構の皆さんには、現場の頑張りにより表彰等されていることについて、多くの市民に知ってもらうべきであり、もっと発表してほしいとお願いしてきた。本当にすばらしい成果を重ねつつある。いろいろな問題も抱えているが、ぜひ先進的な市立病院として頑張ってほしいと思う。最後に、シルバー人材センターについて尋ねる。本市のシルバー人材センターは、昭和58年に設立され、平成24年より公益社団法人の認定を受けたところである。我々議会も一貫した支援を行ってきているが、まず、28年度の福岡市シルバー人材センターの財務状況及び補助金の決算額について伺う。
△保健福祉局長 28年度決算における経常収益は22億5,200万円余、経常費用は22億6,200万円余であり、正味財産期末残高は2億4,400万円余である。また、補助金収入については、市補助金が7,400万円余、国補助金が4,000万円余、合計1億1,400万円余である。
◯藤本委員 28年度のシルバー人材センターの1カ月当たりの平均就業率及び配分金について尋ねる。
△保健福祉局長 28年度の1カ月当たりの平均就業者数は3,759人であり、会員数の54.7%である。また、1カ月当たり平均配分金は3万7,772円である。
◯藤本委員 28年度のシルバー人材センターの事業の契約額と主な業務について尋ねる。
△保健福祉局長 28年度の契約額については、受託事業等が21億2,000万円余、労働者派遣契約が9,500万円余である。主な業務については、受託事業等では、自転車駐車場の管理、屋内清掃作業、除草、家事援助サービス等が多く、労働者派遣契約では、商品の品出し、事業所への送迎や、調理、保育の補助等が多くなっている。
◯藤本委員 全国各都市には意欲的に新しい取り組みに挑戦し、収益につながっている事業がたくさんあるので、福岡市シルバー人材センターにおいても、さらに取り組みを進めてほしい。また、職員の平均年齢が50歳ぐらいと聞いているので、若い職員を採用し、さまざまな仕事の開拓、開発をしてほしいと思う。そして現在の、高齢者の賃金は安くて当たり前という風潮ではなく、能力ある高齢者は若い者と変わらない、労働の質についても量についても十分な能力を持った人がたくさんいるので、その経験、能力を正当に評価し、行政に依存しない、独立した組織に一日も早く成長できるよう頑張っていただきたいと思う。そのような視点から、今後の取り組みを荒瀬副市長に尋ねて、この質問を終わる。
△副市長 少子高齢化が進む中、高齢者が知識や経験を生かして就労し、社会の支え手として活躍していただく取り組みは、大変重要だと認識している。現在、高齢者の就労支援については、ハローワーク等の関係機関との連携を強化するとともに、就労先の確保や職域拡大、自立経営に向けた機能強化に努力しているシルバー人材センターへの支援を引き続き行っていく。また、今年度からは、新たにスタートアップカフェを活用したアクティブシニア起業セミナーを実施するなど、高齢者の創業、就業のきっかけづくりを行っているところである。人生100年時代を見据えて、福岡100プロジェクトをオール福岡で推進しており、高齢者のニーズとライフスタイルに合わせた就労を通じた生きがいづくりを支援することにより、高齢になっても健康で意欲を持ちながら地域社会で活躍できる生涯現役社会の実現に向け、しっかりと取り組んでいく。
◯藤本委員 医療というのは市民の一番ベースになる健康管理である。長寿社会の中で最も重要な役割であるので、工夫して全国のモデルとして一段と頑張っていただきたいと思う。こども病院については、進藤一馬元市長や九大総長で小児科医でもあった遠城寺宗徳先生の思いなどから実現したと聞いている。遠城寺先生は、フランスの社会思想家ジャン・ジャック・ルソーの著書エミールの中にある、子どもは小さな大人ではない、子どもは子ども本来の姿として捉えるべきであるという言葉をよく使われており、多くの小児科医は子どもは大人のミニチュアではないとも表現するが、進藤元市長は遠城寺先生の高邁な理念に感銘を受け、全国初の市立こども病院・感染症センター設立の英断を下されたのである。昨今は、このような高邁な理念や思想や哲学を踏まえて、市民、国民のために政策をしようということが非常に少なくなっているような気がする。このような深い感銘を与える言葉に基づく事業は永続するわけである。遠城寺先生がこの言葉を大事にされたということ、進藤元市長がこの精神に共鳴されたということに限りない本市民としての誇りを感じている。エミールから引用された遠城寺先生の話やこども病院の役割は、子どもの貧困問題と共通のテーマであり、同じ土壌の問題だろうと捉えている。最後に、今回の決算の質問の情報収集を行う中で、私は雷に打たれたような衝撃を受けた。それは市民病院の関係者から聞いた進藤一馬元市長にかかわるエピソードである。市長をやめた後の進藤元市長が、ある年の正月4日に大腿骨の重篤な病気で、専門家が見ても大変な病状を抱えた状況で来院されたそうである。なぜこんなに悪化するまで放っておいたのかと病院関係者が尋ねると、3日までは病院の皆さんは休みで迷惑をかけると思い、きょう参ったとおっしゃったそうである。その言葉を聞いて、病院関係者は顔を上げることができなかったということである。進藤元市長に限らず、私の知る先輩議員や行政の幹部職員の多くの方々が市民病院にお世話になってきた。自分たちがつくった自分たちの病院だという信頼が市民病院にこれほど厚く寄せられているという、決算にふさわしいエピソードを紹介して質問を終わる。





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