藤本 議員の質疑と答弁

◯藤本委員 質問に先立ち、2月19日、不帰の客となった故三角公仁隆議員のみたまに衷心より哀悼の意を表する。また、年長の立場から、本当に心のこもったお別れの言葉をいただいた各会派の議員各位に、会派一同、心からのお礼を申し上げる。会派を同じくした私にとり、今議会は、故人三角君の議会であったという思いがある。死のほとんど直前、みずからの代表質問に思いをはせ、車椅子に酸素ボンベを背負って部屋を訪れたその姿は、まさに議会人の権化と称すべきものであった。市民に果たすべき議員の職責を、文字どおり命を込めて訴えた姿であり、皆、言葉を失った。命がけの無言の重みであった。騒々しいぐらいにぎやかな人物であったが、ユーモアの中にオブラートに包んだ気配りの発言や、直言の端々に優しさのこもった、会派、議会のムードメーカーであった。その人柄をしのび、衷心より御冥福をお祈りしたい。それでは、質問に入る。30年度予算は、市長、そして議員にとり、任期のけじめと将来の市政へ期待を込めた予算編成となる。そして、全国に喧伝される元気な都市福岡は、市政施行以来、歴代の全ての市民の血と汗と涙の努力の結晶でもある。その成果が、住み心地日本トップクラスの評価と、アンケートにおいても市民の共通認識となっている。そのため、本市は、支え合い、悩みを共有する都市圏自治体の力になれる母都市像を目指さなければならない。交流する近隣諸国の都市の幸せに、少しでも貢献できることを模索する必要がある。国内外、遠郊近郊のバランスある交流こそが、安全・安心を具現する将来の本市の存在を高め得ると考える。このような思いから、私は、みらい福岡を代表し、博多港と上海港との連携について、福岡都市圏と共存共栄する広域行政のあり方について、国の中枢機関の九州大学箱崎キャンパス跡地への移転について、以上3点について質問する。まず、博多港と上海港との連携について、去る1月31日、夕刊紙の1面トップに博多上海定期便就航へ覚書との大きな見出し活字が記載された。新春にふさわしい、めでたいニュースであり、1997年に締結された両市両港友好交流の協議書を契機として友好港となって以降、20年に及ぶ相互交流の一大成果である。平成2年に韓国・釜山航路が就航し、平成5年に博多港国際ターミナルが供用され、アジアのゲートウェイに発展し、平成20年にアジアクルーズが本格的に幕開けした。そして、ことしいよいよクルーズ往来から新しい交流を切り開くページにナイフが入った。数の集積から質の充実へ、クルーズが新段階に移行していくと期待している。そこで、博多港と上海港との間で締結された覚書が、博多港のクルーズ振興にどのような意味を持つのか明らかにしていきたい。まず、30年度予算を含む、過去3年のクルーズ船の受け入れに係る施設整備費について尋ねる。
△港湾空港局長 28年度が約11億8,800万円、29年度が約4億7,700万円、30年度は約8億1,500万円である。
◯藤本委員 クルーズ船受け入れに係る、これまでの施設整備の主な内容について尋ねる。
△港湾空港局長 中央ふ頭は、クルーズセンターの整備や岸壁延伸を初め、交通広場や観光バス待機場の整備、屋根つき通路の設置など、箱崎ふ頭は、屋根つき通路の設置や受け入れスタッフ用の施設整備などに取り組んでいる。30年度は、中央ふ頭では、引き続き岸壁延伸などに取り組むとともに、箱崎ふ頭では、これまで船内で行っていた入国手続を下船後効率的に行うための船外施設の整備を予定している。
◯藤本委員 博多港は、クルーズ船の受け入れ環境を整えるため岸壁や周辺施設の整備をいち早く進め、クルーズ拠点としての地位を確立し、平成27年5月にはクルーズセンターを供用し、日本人向けクルーズもふえていると聞く。しかし、カリブ海などの先進地域と比べ、福岡市民にとってクルーズは、まだ身近なものになっていない。一方で、東アジアのクルーズ市場は、欧米のクルーズ船社の中国への配船により、この10年余りで劇的に成長している。そこで、アジアクルーズの現状について認識を尋ねる。
△港湾空港局長 中国を初めとしたアジア諸国の経済成長に伴い、平成17年からの10年間で、アジアのクルーズ人口が76万人から208万人へと、約2.7倍に急増している。こうした状況の中、各クルーズ船社は、アジアのクルーズ市場を今後とも成長が見込める有望なマーケットと見ており、大型の新造船が複数投入される予定であると聞いている。
◯藤本委員 現在、世界のクルーズ業界は中国発着のアジア市場に注目し、多くの船を投入している。その結果、中国から来る巨大なクルーズ船の乗客は4,000人以上で、100台以上のバスが観光先に押し寄せるため、交通渋滞が発生するなどの問題が発生している。これに対し、観光先を訪問する時間を分散させるため、全てのバスにGPSを所持させ、動向を把握しながら指導するという対策を取り、効果を上げていると聞いている。こうした課題解決のノウハウを日本やアジアの各港に提供していくことが、博多港に求められていると思う。そこで、博多港におけるクルーズの課題は何か尋ねる。
△港湾空港局長 大きく分けて3つの課題があると認識している。1つ目は、船社からの寄港要請に対して、受け入れのお断りが生じていることである。平成28年は約130回の寄港をお断りしている。2つ目は、クルーズ客の満足度を向上させることである。海外から観光に訪れる、いわゆるインバウンド旅行者のニーズの多様化に対応した観光の質の向上が不可欠となっている。3つ目は、アウトバウンドを拡大させることである。博多港をクルーズ拠点港として持続的に発展させるためには、インバウンドのみならず、発着クルーズのさらなる拡大も目指す必要がある。
◯藤本委員 これからはクルーズ観光の質の向上に向けて、インバウンド、アウトバウンドの両面から課題を論じていく必要があるが、まず、インバウンドの課題をどのように解決していくのか尋ねる。
△港湾空港局長 ハード面は、現在、中央ふ頭の岸壁延伸を進めており、ことしの秋には、船の大きさによっては2隻同時の受け入れが実現する。引き続き、大型クルーズ船の2隻同時着岸の実現に向けて、国と連携しながら取り組んでいく。これにより、現在、寄港要請に対してお断りをしている状況が改善するものと考えている。ソフト面は、観光バスの渋滞対策に加え、博多旧市街プロジェクトなど福岡の観光資源を生かしたツアーの企画や、今後拡大していく個人旅行者、いわゆるFATへの対応に関係局と連携しながら取り組むことで、旅行者の満足度向上を図っていくなど、インバウンドの課題解決に向けて対応を進めている。
◯藤本委員 インバウンドについて取り組みを進めていると聞き安心した。次に、博多港の特性として、物流は、インバウンドは多いがアウトバウンドがない。人流も、これが弱点であると考えるが、クルーズにとってのアウトバウンドの課題解決について尋ねる。
△港湾空港局長 博多港発着クルーズの頻度をふやすことが重要であると認識している。これまで、日本全体のクルーズ人口が伸び悩む中、博多港発着クルーズに対して優先的に岸壁予約を受け付けることなどにより一定の成果を上げつつあるが、博多港発着クルーズの頻度をより高めるためには、上海との連携による定期定点クルーズ航路が、次に打つべき一手であり、その実現により博多港がクルーズの発着港として、さらに成長していくものと考えている。
◯藤本委員 博多港のアウトバウンドの課題解決には、上海港との連携が重要と聞いている。我々世代にとって上海航路という言葉は、悠久の歴史と郷愁を感じさせてくれる特別な響きを持った言葉である。それだけに、博多港と上海港という日中ナンバーワン港が連携して、東アジアのクルーズ市場をリードしていくことは大変頼もしい。そこで、連携に至る経緯を尋ねる。
△港湾空港局長 上海との20年以上にわたる相互交流の一環として、昨年の夏に上海を訪問した際に、上海側から両港の連携について提案を受けたものである。その後、具体的な内容について協議を重ね、定期定点クルーズ航路の実現など、アウトバウンドの拡大が課題である本市と、インバウンドの拡大が課題である上海の両港にとって、ウィンウィンとなる共通の目的が確認できたことから、ことしの1月に覚書を締結したものである。また、昨年9月には、コンテナ取扱量が世界最大の港である上海港と博多港が、世界で初めてIT連携を開始しており、今回の覚書を締結したことによって、物流のみならず人流面での連携も本格化させていく。
◯藤本委員 アジアの交流拠点都市を標榜する本市としては、いにしえより名実ともにアジアの交流拠点都市である上海側から連携の申し出があったことは、実に画期的なことだと考えるが、上海と連携することになった目的や、今後の取り組みについて尋ねる。
△港湾空港局長 東アジアのクルーズ市場は過去10年余りで急成長を遂げたが、いわゆる爆買いが一段落し、観光に重点を移した次のステージへステップアップさせる時期に来ている。このため、上海との連携は、東アジアクルーズ市場の持続的な成長を牽引し、クルーズ客の満足度向上と地域経済の活性化を好循環させる、新たな成長モデルの構築を目指すことを目的としている。また、両港を発着する定期定点クルーズ航路の実現のほか、両港が共同で質の高い寄港地観光メニューをクルーズ船社に提案していくなど、アジアクルーズの質を高めていく取り組みを進めていきたい。
◯藤本委員 博多と上海の定期航路を実現する定期定点クルーズは、大陸との交流にふさわしい発想であり、日中間の交流が深まることを願うものである。市民あるいはクルーズ客の立場から、この両港を発着する定期定点クルーズが実現すると、どのような旅行が可能となるのか。
△港湾空港局長 現在、上海からのクルーズ客は、4〜5泊の行程の中で、朝、福岡に来て、同日中に次の目的地へ移動している。博多港を定期的かつ多頻度で発着するクルーズ船がふえることで、カリブ海や地中海と同様に、市民がいつでも気軽にクルーズを利用することができるようになると考えている。さらに、外国人を含むクルーズ客にとっても、片道を飛行機と組み合わせることで、短期間のクルーズ旅行も可能となり、また、寄港地での滞在時間もふやすことができるようになると考えている。
◯藤本委員 上海との定期航路の実現でクルーズを利用しやすくなることはわかるが、地域経済への効果について尋ねる。
△港湾空港局長 インバウンド、アウトバウンド双方にメリットがあるが、アウトバウンドでは、定期定点クルーズで博多港が発着港となれば、例えば、乗船前に本市内に1泊することで、宿泊、買い物、飲食などの消費の拡大が図られ、地域経済の活性化に寄与できるものと考えている。加えて、本市の強みである陸、海、空の交通拠点の近接性を生かしたフライアンドクルーズやレールアンドクルーズにより、国内外からの集客を図ることができ、さらに大きな経済効果が得られるものと考えている。
◯藤本委員 定期定点クルーズは、上海と博多両港にとって相互にメリットがある取り組みであり、その実現を通して、東アジアをカリブ海のようなクルーズのメッカとすることに非常に期待が持てる。ことしは、日中平和友好条約の締結から40年となる。この節目の年に福岡と上海が友好関係の新たな段階に入ることは大変有意義であり、これを契機として日本と中国の両国間の交流をさらに進化させることにつなげるため、本市としては、今回の上海との提携を活用し、クルーズ施策にさらなる厚みを増していくための工夫が必要と考えるが、博多港におけるクルーズ施策をどう展開していくのか所見を尋ねる。
△港湾空港局長 第3次産業が約9割を占める産業構造である本市では、交流人口の拡大を図り、多くの消費者を福岡に集めることが持続的な成長の鍵を握っている。クルーズは、インバウンドによる集客だけでなく、本市の強みである陸、海、空の広域交通ネットワークを利用したアウトバウンドの集客も期待できる重要な産業であると認識している。このため、日本一の寄港回数を誇る博多港を発着港として成長させるとともに、拡大する個人旅行や寄港地観光の多様化など時代の流れを捉えた新たなクルーズ観光の創出に努め、博多港がクルーズ船、クルーズ客、双方から選ばれる港になることで、国の観光戦略で掲げるクルーズによる訪日客数500万人の目標達成に向けて、その役割を果たしていきたい。また、上海を初め国内外の港や官民のクルーズ関係者と連携し、東アジアのクルーズ市場を発展させ、本市のみならず各地域の経済活性に寄与するとともに、博多、上海双方向の旅行を活発化することで、市民レベルでの交流にも一定の寄与を図っていきたい。
◯藤本委員 航空路線だが、KLMオランダ航空の撤退や、今復活したがハワイ便、新潟便の休止などをみると、インバウンドよりアウトバウンドの力をつける必要があると考える。このことが、継続的に交流を深めていく一番のポイントと考える。次に、福岡都市圏と共存共栄する広域行政のあり方について質問する。平成27年の国勢調査によると、筑紫野市28%、春日市43%、大野城市40%、宗像市16%、太宰府市32%、古賀市27%、福津市23%、糸島市40%、那珂川町42%、宇美町29%、篠栗町35%、志免町41%、須恵町30%、新宮町42%、久山町33%、粕屋町45%。この数字は、福岡都市圏16市町の15歳以上の就業者で、本市で働いている人の割合である。本市職員も約3割が市外居住者と聞いている。これは、本市は都市圏の支えがなければ機能しない都市であることを意味している。本市と都市圏は、押し寄せる少子高齢化、積み上がる財政債務から、将来は、都市圏各自治体の壁を越えたバリアフリーな都市圏行政の包括ケアなくしては成り立ち得なくなると考える。そして、母都市福岡のリーダーシップの発揮は、時代の責務であると考える。本市はかつて太宰府インター、福岡インターの市域外道路を全国で初めて福岡市道として負担整備し、防災面でも平成29年11月、福岡都市圏消防共同指令センターが完成、おくれて参加する3市を除く都市圏119番通報の全てを福岡都市圏消防共同指令センターで受け付け、既に多くの成果を上げている。また本年4月より、消防局で、本市内の各種災害対応に限らず他都市災害を支援する機動救助隊が創設される。本市は母都市として、交通基盤、防災、観光、水道、医療、福祉、環境など、既に共有する具体的な課題に旺盛なリーダーシップを発揮している。過去何度か広域行政について質問しているが、私は、自然発生型論の道州論者であり、県と地方中核都市レベルで広域行政化を進め、広域行政の知識と練度を高め、次第に行政区域を越えて統合を重ね、道路交通網の発達とあわせて、その結果として道州制的な超広域行政に進むという考え方、偏在する国富を分散、集約するという考え方である。福岡都市圏では、昭和53年に福岡都市圏広域行政推進協議会を設立し、長年にわたり広域行政に取り組んできた歴史があるが、福岡都市圏広域行政推進協議会の構成団体及びその目的、具体的な取り組み内容、30年度の予算総額及び本市の負担額について尋ねる。
△総務企画局長 筑紫野市、春日市、大野城市、太宰府市、那珂川町、古賀市、宇美町、篠栗町、志免町、須恵町、新宮町、久山町、粕屋町、宗像市、福津市、糸島市及び本市の17市町で構成しており、この圏域における広域行政の推進を図るため、広域行政計画の策定及びその計画に掲げられた事業の調整を行うことを目的としている。具体的な取り組み内容は、都市圏のマスタープランである福岡都市圏広域行政計画に基づいて、都市圏17市町の図書館やスポーツ施設の広域利用など、さまざまな共同事業を推進するとともに、国や福岡県などの関係機関に対する提言活動を行っている。30年度の予算総額は671万円であり、そのうち本市の負担額は288万3,000円である。
◯藤本委員 この推進協議会以外にも、本市として各局が観光や医療、福祉、環境などの分野で広域的な事業を行っていると思うが、観光プロモーション、ごみ処理、火葬場運営の現在の取り組みについて、また市民病院、こども病院への本市外及び都市圏の患者の割合について尋ねる。
△経済観光文化局長 観光プロモーションは、都市圏の自治体及び観光協会等とともに、福岡地区観光協議会を組織し、都市圏への観光客の増加と周遊の促進を図るため、歴史、文化、自然など魅力ある観光資源を周遊するルートの開発や、パンフレット作成、メディアを活用した情報発信などに共同で取り組んでいる。また、29年度には、宗像・沖ノ島の世界遺産登録を契機に、首都圏などからの旅行商品の開発、販売を促進したほか、30年度には、31年度以降に本市で開催される大型スポーツMICEに備え、多言語対応の強化を図る予定としており、時宜を得た事業にも積極的に取り組んでいく。
△環境局長 ごみ処理における広域的な取り組みは、本市と春日市、大野城市、太宰府市、那珂川町の4市1町で、福岡都市圏南部環境事業組合を設立し、焼却施設であるクリーン・エネ・パーク南部と最終処分場であるグリーンヒルまどかにおいて、都市圏南部地域の可燃ごみの共同処理を行っている。
△保健福祉局長 本市の火葬場は、南区に福岡市葬祭場刻の森、西区に福岡市玄界島火葬場があるが、そのほか、福岡都市圏での広域的事業の取り組みとして、本市を含む3市7町で構成された一部事務組合が、古賀市において北筑昇華苑を運営している。また、市民病院、こども病院における本市外からの延べ患者の割合は、28年度実績で、市民病院の外来患者が36.6%、入院患者が45.0%、こども病院の外来患者が46.4%、入院患者が57.2%である。次に、本市を除く福岡都市圏からの延べ患者の割合は、市民病院の外来患者が26.5%、入院患者が36.8%、こども病院の外来患者が26.6%、入院患者が23.2%である。
◯藤本委員 次に、防災面の取り組みについて、昨年発足した福岡都市圏消防共同指令センター及び新年度に創設される機動救助隊の事業内容及び30年度予算額を尋ねる。
△消防局長 福岡都市圏消防共同指令センターは、福岡都市圏において大規模災害が発生した場合など119番通報が集中したときの処理能力の向上や、各消防本部間の相互応援出動の迅速化などを目的として、また福岡都市圏各消防本部の119番指令センターの予算や人員の効率化を図るため、平成29年11月から運用を開始したものであり、30年度も福岡都市圏の消防本部との連携を深め、共同指令センターの適切な運営に努めていく。30年度の予算額は6億6,869万9,000円を計上している。機動救助隊は、本市内における大規模災害や特殊災害等が発生した際の対応力を強化するために創設するものであり、応援要請に基づき、その出動範囲は福岡都市圏などの市外にも及ぶ。30年度の予算額は、高度な救助活動に必要となる車両や資機材等を整備するため、1億2,867万3,000円を計上している。
◯藤本委員 私は、昭和60年代に南北財務局、南北戦争の当事者だったが、当時、都市間競争という言葉で福岡と熊本の都市間競争を議論したとき、本市は半径50キロ圏内、唐津までが福岡都市圏であるという認識だった。当時、唐津から福岡に働きに来る人が就業者人口の約3%あったと思う。本市は観光資源がないと言われるが、都市圏に広げると観光資源に恵まれているので、連携して観光資源をPRすることで、福岡は観光都市であるということを強く印象づけられる。また、広域行政の重要な取り組みの一つが水道行政であり、流域だけでなく広域的な連携が重要である。福岡都市圏は地理的に水資源に恵まれず、本市では、過去2度にわたる大渇水を経験した。このため、昭和48年には筑後川からの給水事業を行うため、都市圏が一体となって福岡地区水道企業団を設立し、平成17年には全国最大規模の海水淡水化センターを供用開始した。このような水道分野での広域連携が、現在の本市を初めとした都市圏の発展につながったと考える。また、春日那珂川水道企業団の違法取水問題は、発展する福岡都市圏の負の側面ではないかと考える。現在、自主水源の確保に努めているが、その是正がなされた後は、福岡都市圏として水道の広域連携、一体的な水道行政に移るべきと考える。そこで、本市はこれまで人的支援、技術的支援などを行ってきたが、今後も福岡地区水道企業団等と連携し、都市圏17市町が一体となって課題解決を図り、都市圏の水道事業が将来にわたって持続できるよう、より一層の研究、検討を進め、違法取水問題等も含め、水道行政の一元化に努めるよう要望する。最後に、本市は母都市としての役割を発揮していく必要があると考えている。今後とも、都市圏広域行政にどのように取り組んでいくのか所見を尋ねる。
△総務企画局長 福岡都市圏における広域行政は、全国に先駆け、水や医療、観光、環境といった幅広い分野において、都市圏の市町が連携して取り組みを進めてきたものである。また、第9次福岡市基本計画では、福岡都市圏全体として発展し、広域的な役割を担うことを都市経営の基本戦略として掲げており、消防共同指令センターを設置するなど都市圏広域行政の具体的な推進に努めている。今後、少子高齢化による生産年齢人口の減少や社会保障費の増加、また公共施設の老朽化や人材の確保、技術の伝承といった課題の顕在化が見込まれている中、質の高い行政サービスを提供し、圏域が一体的に成長し続けていくためには、都市圏という広域的な視点から、より一層連携を深めていく必要があるものと考えている。今後とも、九州を牽引する福岡都市圏の母都市として、都市圏住民の住みやすさの向上と圏域の持続的な発展のため、幅広い分野での連携をさらに推進していく。
◯藤本委員 市町村は企画分野を持っていないので、本市の企画力が各自治体から羨望の目で見られている。私は県にいるとき、企画分野を持たない自治体が多いということに驚いたことがある。総務企画というものは、大変貴重な本市の頭脳であり、都市圏の発展と共存共栄のために、一段の努力をお願いする。次に、私の持論である国の中枢機関の九州大学箱崎キャンパス跡地への移転について尋ねる。箱崎は、依然として航空騒音が残されている。また、筥崎宮やその門前町が、次第にコンクリートジャングルの谷間に落ち込みつつある。そして、豊かな地下水でその名も高かった日本三大蔬菜、野菜の生産地、その農地を九州大学にささげ、九大を誇りとし、九大と暮らしをともにした箱崎が今苦悩のふちに沈んでいる。誇りと活気を取り戻したいという切なる思いが、至るところで語られている。表面的には区画整理で整然としたまち並みが整備されているが、知の象徴九州大学、町民文化の代表筥崎宮、その歴史と伝統と文化をいかにして取り戻し、未来へ生かしていくのか。九大跡地を取り込む箱崎のまちづくり、まちおこしについて、まず箱崎キャンパス跡地のまちづくりにおける30年度の主な取り組み内容と予算額について尋ねる。
△住宅都市局長 関連局分も含めて、FUKUOKA Smart EASTを初めとするまちづくりの検討経費として約3,000万円、土地区画整理事業や環境影響評価に関する調査費として約8,100万円、都市計画道路堅粕箱崎線と原田箱崎線、及びこれに関連する公共下水道に係る設計測量経費として約2億4,000万円、合計で約3億5,000万円を計上している。
◯藤本委員 私は、自宅のある香椎へ、博多駅からあるいは中洲や箱崎駅から歩いて帰るが、箱崎キャンパス周辺を通ると、夜にもかかわらず真上を飛ぶ航空機の騒音が大変気になる。新たに立地する事業者が、環境としては心地よいものではないと捉えることもある。そこで、福岡空港における直近の航空機の発着回数について、年間総数と1日平均を尋ねる。
△住宅都市局長 福岡空港事務所の速報値によると、平成29年の発着回数は17万8,188回、1日平均488回である。
◯藤本委員 航空機は軽量化して小型化しているが本当にすごい騒音が時々する。本市は、九州大学あるいは国の行政機関が立地したおかげで、特に洞海湾や筑豊地域を背景に九大の生み出す人材、発散する情報などの力で、今日の発展がある。九州大学への恩返しを考えると、新キャンパスで西日本、九州、あるいは日本国のため活躍できるよう、箱崎キャンパス跡地の付加価値を高めることが本市の責任と考えている。例えば、貝塚駅をJRと一緒に使えるようにすることなどを考えるが、市長を中心に進めているFUKUOKA Smart EASTについて尋ねる。
△住宅都市局長 箱崎の町は1,000年以上前から文化の交流拠点であり、100年前に九州大学が設立されてからは知の拠点として発展し、この文化や歴史を継承し次の100年を見据えて持続的に発展していくまちづくりに取り組んでいくことが重要であると考えている。そのため、箱崎キャンパス跡地のまちづくりは、交通利便性が高く、都心部に近い約50ヘクタールの土地が一体的に活用できるという強みを生かし、最先端の技術革新の導入などによる快適で質の高いライフスタイルと都市空間を創出するFUKUOKA Smart EASTに取り組んでいる。
◯藤本委員 大変可能性に満ちたものだろうと思うが、 Smart EASTという意味がはっきりわからない。九大にかわる新たな都市機能を誘導する際の都市基盤整備が必要であるため、跡地周辺を含む約50ヘクタールを南北に分け、北エリアでは本市施行による土地区画整理事業が計画されている。あえて本市が施行者となるのは、都市機能誘導の観点も関係しているのではないかと推測するが、土地区画整理事業で実施する理由と、本市を施行者とする理由を尋ねる。
△住宅都市局長 約43ヘクタールの箱崎キャンパス跡地と貝塚駅周辺や現在の箱崎中学校などを含めた約50ヘクタールを対象に、エリアの特性や整備スケジュールなどを踏まえて、北エリアと南エリアに分けた整備手法で検討を進めている。北エリアの約20ヘクタールは、貝塚駅周辺の交通結節機能の強化など脆弱な都市基盤の解消に向け、土地区画整理事業によるまちづくりを計画している。実施主体は、貝塚公園や箱崎中学校、地下鉄などの公共施設が多く占めることに加え、多数の関係者との調整が必要となることなどから、本市による施行を予定している。
◯藤本委員 箱崎は今、学生や教職員を含めて既に1万3,000人が伊都地区へ移転し、飲食店の閉店など空洞化が進み経済面への影響も生じている。原状回復は公共事業に伴う義務であり、事業当初から周辺地域の経済損失補填を本市は想定していたと思うが、箱崎キャンパス移転を開始した平成17年以降の周辺人口や周辺駅の乗降人員、飲食店や小売店など第3次産業の事業所数及びその従業員数の推移を尋ねる。
△住宅都市局長 箱崎キャンパスは、平成17年10月に工学系地区から移転を開始しているが、箱崎キャンパス及びその周辺の箱崎校区、東箱崎校区、筥松校区、松島校区の4つの小学校区を合計した人口は、住民基本台帳によると、各年9月時点で、平成17年が4万3,918人、平成29年は5万4,009人で約23%の増である。西鉄貝塚駅、地下鉄貝塚駅、地下鉄箱崎九大前駅における1日平均乗降人員の合計は、17年度が3万5,555人、直近のデータがある28年度は4万3,764人で約23%の増である。また、周辺4校区及び一部地域における第3次産業の事業所数及び従業員数は、比較できる統計データがある平成21年以降の経済センサスによると、平成21年が2,244事業所、3万5,106人で、直近のデータがある平成26年は2,226事業所、3万4,711人で、ともに約1%の減である。
◯藤本委員 数字だけ見ると人口はふえている印象を受ける。担当者は箱崎の町は自然に人口が増加し立派な町ができるとは考えていないと思うが、箱崎地区の人口増は独特の要素がある。この数値で満足しないように意見を述べておく。また、10年前に西日本新聞に「大学が消える街 箱崎は今」という連載記事があった。100年の歴史の中で周辺住民や商店街の方々と大学が築いてきた密接な関係、きずなが、移転で失われつつある、その苦悩や前に進もうとしている商店街の姿がよく描かれた記事であった。一部引用すると、学生有志がつくった箱崎九大記憶保存会のメンバーが取材に訪れた際、あなたたちのおかげで多くの思い出ができたと感謝の言葉をもらうたびに、街と大学が支え合ってきた歴史の重みをかみしめる、とある。事業者への土地引き渡しが、早くても2022年以降と聞いているが、その間の経済損失は、はかり知れないものがあると考える。昨年8月の九州大学移転・跡地対策協議会において、私が九州大学は都市のインフラであるかと尋ね、担当局長はインフラであると答弁した。インフラであれば当然原状回復という側面が伴うものだが、九州大学が移転したことによる周辺地域の経済損失についてどのように考え進めていくのか尋ねる。
△住宅都市局長 箱崎キャンパス跡地の周辺地域や商店街にとって、100年ともに歩んできた九州大学が移転することは、統計データだけでは、はかり知れない影響があるものと認識している。本市としても、周辺地域の活力低下や経済損失をできる限り防ぐため、早期の土地利用転換に向け、スピード感を持って取り組むとともに、地域、本市にとって未来に誇れる魅力的な街を創造していくことが重要であると考えている。
◯藤本委員 私は、議会で繰り返しこの問題を取り上げてきたが、周辺地域の経済損失を補う具体的な提案はない。現在の博多駅筑紫口に集積している国の出先機関の状況を歩いて調べてきたが、その結果、合同庁舎を含めて本市内に58庁舎、職員数は合計で1万94人であることがわかった。国の機関が立地すれば、1万人を超える職員と関連企業、関連団体、それに伴う飲食店等のサービス業が立地して、若い学生の声は聞こえないが、力強い、ずっしりと根の生えた経済基盤ができると考える。箱崎地区に、九大を抱えていたときと同じような誇りを取り戻してほしいと思っており、機動力を持って進めるよう要望する。また、ことしも223人の市職員が定年退職を迎える。長きにわたり福岡市政に貢献されたことに感謝の意を表し最後の質問をする。国の中枢管理機能が本市に存在していることの意義、九州大学があり、市民からは見えないけれども人間で言えばへその緒である。大きな街は懐の深い、一般から見えない機能や能力を持っている。人物でも、そういう人物が大物である。都市も同じである。市民からわかりにくいところであるが、少なくとも本市のリーダーや我々議会、経済界などはしっかり認識した上で、昭和の初期、わずか3番目の街だった福岡が、今日ここまで大きくなったということを振り返り、将来を考えていかなければならないが所見を尋ねる。
△住宅都市局長 知の拠点として学問や人材育成を牽引する九州大学や、国の情報がいち早く入手できる行政機関の誘致に成功したことは、陸、海、空の広域交通機能の充実と相まって、経済、行政、情報、文化など多様な都市機能の集積に寄与し、現在の本市の発展につながったものと認識している。合同庁舎を初めとした国の行政機関の移転については、国の意向を把握しながら、本市全体のまちづくりの観点から適切に対応していく。箱崎キャンパス跡地については、本市の発展を支え、地域とともに歩んできた大学100年の歴史を継承しながら、最先端の技術革新による先進的なまちづくりFUKUOKA Smart EASTの実現に向けて、地域を初め九州大学などの関係者と連携しながら、世界に誇れるまちづくりに取り組んでいく。





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